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    愛すればこそ 3.

 雨は降りやまない。強い雨音に交じって、あの人の笑顔が浮かぶ。忘れられない。別れたくない。なぜ別れ?どうしてなの。


 また涙がこぼれてくる。昨夜から何度涙にくれたか。良いの私が悪いの。ごめんなさい。許して下さい。


 何度考えても理由が見つからない。あまりにも急だった。突然の別れ話。彼女は頭が混乱していた。


 一夜にしてやつれ果てた。彼女は彼との結婚を夢見ていた。自分からは言い出せず、彼の言葉を待っていた。


 彼女は夢遊病者のように立ち上がった。居ても立ってもいられない。彼に会いたい。


 土砂降りの雨の中小さな傘をさして、彼のアパートに向かった。ずぶ濡れである。


 駅を降りると、雨は小雨になっていたが降り続いている。彼は居るだろうか。居て欲しい。もうすぐアパートに着く。


 部屋には電気が点いている。ノックすることがためらわれた。ドアの前に佇んだ。濡れた服が冷たい。


 寒さに身体が震えてきた。立っていられなくなってしゃがみ込んだ。


 階段を上って来る音がする。足音が近づいて来た。彼女は立ち上がった。彼だった。スーパーの買い物袋を手にしている。


「帰ってくれ!」


 彼は邪険に肩を押しのけた。その肩は冷たくずぶ濡れだった。顔は青白く、唇は震えていた。このままには出来ない。


「中に入って」


 その姿に胸がせつなくなった。彼女を押すようにドアの中に入れた。部屋に座らせ、彼女の衣類を出して来た。


「早く着替えて、風邪ひくぞ」


 邪険に言いながら、風呂に湯を入れ始めた。そして、急いで珈琲を入れた。


「何をしている。早く着替えて」


「はい、すみません」


 声が震えている。彼女は着替えを手に脱衣所に移動した。顔を上げない。泣いていた。なかなか出てこない。


 そう思っていると、


 ”お風呂が沸きました”自動音声が知らせた。


「丁度良い、風呂に入んなさい」


「はい、ありがとうございます」


 彼女はいつもにない丁寧なお礼言葉を使った。彼は、彼女に淹れた珈琲を自分で飲み始めた。


                       つづく

次回は1月10日金曜日朝10時に掲載します