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        恋の終わり 9

 その朝もデスクに座っていながら、居心地が悪かった。みんなの視線が気になる。昇進を外されたと思われているようだった。


「菊池君、ちょっと来てくれないか?」


 課長が肩をちょいと叩いた。いつの間に来たのか後ろにいた。


 気付かなかった。何を考えていたのだろう。咄嗟に立ち上がった。


「はい!わかりました」


 えっ!肩たたき?そんなことはと思いながら後に続いた。会議室に入ると、


「そこに座って!」


 課長はにっこり笑って言う。


「四月から三課に課長として異動してもらう。おめでとう!」


 席に戻ると腰が落ち着かなかった。菊池の目に入るもの全てが明るく見える。世の中も全てに太陽が当たり輝かしい。


 内示が遅かったのではない。管内と管外の違いだった。自分が忘れていただけのことである。


 管外は引っ越しその他の事が発生するため早めに内示される。みんなの視線は自分の意識過剰であった。


 紀子は毎日が辛かった。出社すると、心から愛した人が同じフロアにいる。その人に相手がいるとわかった。汚らわしい。顔も見たくない。


 しかし、別れてみると辛かった日々より、楽しかった日々が思い出される。菊池が好きだ。思い浮かべると胸が締め付けられる。


 菊池はそれからも何度も訪ねて来て、ドアの前に立っていた。腹いせもあり絶対に開けなかった。辛かった。悲しかった。


 最後になった日は、せつなくてせつなくて、遠く離れた後ろからついて行った。出来る事なら呼び戻したかった。


あなたは時々振り返り、何度も立ち止まりながら歩いて行った。そして、思い切ったように改札を入って行った。


 それを見た私は走った。改札の前まで来て立ち止まった。


 涙が溢れて来た。暫く立っていたが、乗降客の流れに身を置けず帰って来た。


 今の私は、自分がどうしていいかわからなくなってしまった。


 会社を辞めようと思う。


                                 つづく

次回最終回10回は7月14日金曜日です