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          恋の終わり 8

 秋が来て冬が来た。二人は週末を吉野の部屋で過ごした。菊池は吉野を紀子と名前で呼んだ。


 十二月の忘年会シーズン。菊池は週末に帰らぬ日が二度あった。


 紀子は互いに愛し合い、心と身体が一つになることの幸せを知った。


 初めての夜は紀子の安全日だった。菊池はそれとなく話を聞いて、以後避妊具を用意した。


 それは紀子には悲しかった。菊池の子供を産みたかった。しかし、結婚の話は意識して避けた。そして、菊池の言い出すのを待っていた。


 菊池は結婚の話を言い出すのが怖かった。紀子とはひと廻り以上歳が違う、紀子が承諾するとは到底思えなかった。


 二人の思い違いは誤解に発展した。


 酔って帰った菊池は、なぜか酔うと男の機能は弱ると言った。紀子は不審だった。愛撫する振りをして男を検査した。


 煌々とした灯りの下で見た。少し赤みがかり雁首に恥垢が残っていた。綺麗好きの菊池と違う。これで二度目。心の中に黒い靄が残った。


 決定的なのは三月。深夜の帰宅だった。酒の匂いはしたが酔っていなかった。


 いつものように乳房を吸って核心をいたぶって来た。しかし、いつまで経っても入って来ない。待ち兼ねて手を伸ばした。そこは普段のままだった。


「ごめん、今日は疲れた」


 菊池は失意のどん底にいた。課長昇進の内示が無い。周りの噂を信じていただけに悔しさでいっぱいだった。精神的なダメージは男に直結した。


 紀子は一晩中眠れなかった。私以外に相手がいる。悔しさより悲しかった。三キロ痩せた。


 紀子は決心した。別れよう。


 菊池は次の日も次の日も紀子を訪ねた。今日もドアは開かなかった。


「帰って下さい。もう会いません」


「どう言うこと?」


「自分の胸に聞いて下さい」


「理由がわからない」


「もう来ないで下さい」


 その後、日を置いて三度訪ねたが居留守を使われた。


 課長昇進の無い私に、愛想を尽かしたのなら仕方ない。菊池は夢を無くした。駅に向かって歩き始めた。


 もう、この道を通ることは無い。そしてこの駅も来ることは無い。そう思うと胸が張り裂けそうだった。


                                つづく

次回第9回は7月7日金曜日です