Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

        恋の終わり 5

  菊池は無口になった。吉野は菊池の思いつめたような表情の変化に胸が苦しくなった。


『好きな人がいるんだわ。なぜわかりきったことを質問したのだろう』


 向かい合って座っているのに、顔を合わせられなかった。吉野はせつなかった。


 菊池の頭の中には、もう年下の彼女はいなかった。心をせつなくする女性がいた。


「吉野君、クラッシック音楽が好きだと言っていたね。僕にはよくわからないが、本当に聞いて楽しい?」


 菊池は沈黙が耐えられなくて、口を開いた。言いながら愚問だと反省した。


「えっ、本当にとは意外ですね。どうしてですか?」


「中学の頃、音楽の授業でベートーベンの運命を聴かされた。まず冒頭を聴かされ、”ダダダ、ダーン”運命はこのように扉を叩くとのベートーベンの言葉は面白かった。しかし、後は退屈で早く終わって欲しいと思った」


「第一長すぎる。三十分近い演奏。これでも短い方だと言う。とても聞いていられないと思った」


「それはみんな同じです。興味を持って聞かないと退屈します」


「興味とはなに?」


「有名だけどどんな曲?と聴いていると好きな曲が必ず見つかります。すると全体が聴きたくなってきます。興味が連鎖するのです」


「しかし、有名な曲を知らない僕は、興味を持つには程遠いと思うよ」


「映画音楽や、コマーシャルには多くのクラシックの曲が使われていますよ」


「ふーん、例えば?」


「ウイスキーとか車のコマーシャルは多いですね。口ずさんでもわかりませんから、明日CDをお持ちします」


「でも、僕はステレオを持っていないんだ」


 吉野はちょっと考えたが、にっこり笑って、


「私の家に来ませんか?」


 思い切ったことを言う。


「良いの?」


「もちろんです。では、明日経堂駅の改札口に来て下さい」


 話はとんとん拍子に決まり、十三時に待ち合わせすることに決まった。


 二人は居酒屋を出た。


 明日の土曜日、吉野は何かが起きる予感がした。


                                つづく

次回第6回は6月16日金曜日です。

第5回掲載が遅れましてお詫びいたします。