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   恋の終わり 10 最終回

 紀子が退社して半年になる。菊池はやっと課長職に慣れた。


 この頃は紀子のことが思い出されてならない。退社の理由は自分にあるような気がする。


 あの頃の自分は失意のどん底にいた。馬鹿な思い込みの為に紀子に辛く当たってしまった。当たることで腹いせを癒すかのように。


 そして、何度も言い争った。今思えば菊池の一方的な言い争いだった。


 味が薄いとか、なぜこんな曲をかけるのだ!などのたわいもない事ばかりだった。


 そんな言葉にも紀子は嫌な顔をせず、どんなときにも優しかった。


 身体を合わすことさえ腹いせを癒すためだった。紀子は黙って応じてくれたが、菊池の男はいつまでも軟らかなままだった。


 自分が遥か年上であることを忘れ、いつの間にか紀子を頼っていたのだ。その重みに小さな胸を痛めていたに違いない。


 辛かっただろうと思う。決定的なのは、


「君は、若いからわからないんだ!」


 二人の間に亀裂が走った。思い出せば出すほどに自分は酷い男だった。菊池は自分に愛想が尽きた。


 いまさらながら、紀子に償えるものなら償いたかった。菊池は申し訳なさで胸が張り裂ける思いだった。


 菊池は思い始めると居ても立ってもいられなかった。退社するとそのまま紀子のアパートへ向かった。


 名前を告げるとドアが開いた。菊池は予想外のことにびっくりした。開けて貰えるとは思っていなかった。


「元気だった?」


「何か御用ですか?」


 紀子は大分痩せたようだった。


「ごめんね、僕が悪かった。みんな僕が悪い。許してくれないか?」


 紀子は両手を顔に当ててその場にしゃがみ込んだ。声を抑えて泣きながら、


「私が悪いんです。ごめんなさい。ごめんなさい」


「悪いのは僕だ!ごめん、本当にごめん!」


 菊池はしゃがむと紀子をそっと抱きしめて言った。


 紀子は退社後、社内の友人との茶飲み会で菊池の話が出た。女子社員に結構人気があったようだ。

 

 話は男の生理現象にまで発展した。精神的不能の話には驚いた。


気になりネット等で調べ当時の状況を考え合わせると、自分の思い違いだったと思われる。


 今更遅いが菊池に申し訳なかったと悔いるばかりだった。


「ごめんね、やっとわかったんだ。僕には君しかいないって」


 それから半年後二人は結婚した。


                                    完

新作は来週7月21日金曜日に掲載いたします