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                                   心の隙間 9.

 アパートに帰ると、早速デイップ作りを始めた。簡単なレシピだから作ってみたかった。本当に簡単だった。


 食べてみると何だかぼさーっとした味で美味しくもなんともない。確かマヨネーズ大匙4杯と胡椒少々と聞いた。


 いくら思い出してもそれ以上のことは思い出せない。思い切って、先程聞いた石崎の番号に電話をしてみた。


「広瀬です。先程はありがとうございました。早速作ってみました。何か聞き忘れたことがあったのではないかと思いまして…」


「多分、味のことでしょう。デイップはそれだけでは美味しくないから、何か忘れたと思ったのでしょう」


「そうなんです。何かぼさっとした味なものですから」


「それで良いのですよ。デイップはそう言う味です。クラッカーの塩味で丁度良くなります」


「そう言うことですか。安心しました。ありがとうございました」


「それとデイップには色んな種類があります。今度食べてみますか?」


「はい、是非食べてみたいですね」


「じゃ、作りましょう。明後日の土曜日はいかがですか?」


「土曜日は休みです。材料を一緒に買いに行ってはだめですか?」


 広瀬は石崎に負担をかけたくないと思った。


「はい、良いですよ。何時頃が良いですか?」


「午後の3時頃はいかがですか?」


「はい、ではその時間にスーパーの入り口でお待ちします」


 広瀬は30分も前から入口で待っていた。10分前になると石崎がにっこり笑いながら、


「すみません、お待たせしました」


「いえ、僕も今来たばかりです」


 石崎の買い物は手際が良かった。アボガド、キウイ、クリームチーズ、明太子、サラミ、ツナ缶に丸いクラッカーをカゴに入れると、


「これで終わりです。レジに行きましょう」


「それ、僕が払います」


 カゴを彼女から取ろうとすると


「いいえ、私が買ったものです。私が当然払います」


「僕に食べさせていただけるのではなかったですか?」


「もちろん、そのつもりですよ」


「でしたら、そうさせて下さい。お作りいただけるだけでも申し訳ないと思っています。お願いします」


 広瀬は詫びるようにして彼女からカゴを強引に取った。


「あら、困りましたね。わかりました。では折角だから一緒に作りましょうか?」


「良いですね、是非お願いします」


「じゃ、私のアパートへ行きましょう」


 石崎は何の屈託もなく言う。広瀬は嬉しくなった。予想もしなかったことである。


                       つづく

次回10回は5月28日金曜日朝10時に掲載します