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            心の隙間 7

 「新百合ヶ丘は次の駅ですね。今日は久しぶりのボーリングで楽しかったです。ありがとうございました」


「私、あんなに夢中になるゲームとは思いませんでした。偶然ですがストライクの気持の良いこと。スカッとしました」


「また、行きませんか?」


「はい、是非お誘い下さい」


「ここからは、近くの町田にあります。今度行きましょう」


「はい、ご連絡下さい」


「そうだ、電話番号聞いていなかった。教えて下さい」


 吉沢はバックからメモ帳を取り出し番号を書きだすと、広瀬に渡した。


「ありがとう。今、電話しますね」


 吉沢のスマホが鳴りだした。


「それが僕の番号です。帰ったらボーリング場の状況を調べて電話しても良いですか?」


「はい、いつでもどうぞ」


 吉沢はにっこり笑って言う。広瀬は心が躍るように嬉しくなった。吉沢は新百合ヶ丘で降りて行った。


 相模大野のアパートに着くと、すぐにボーリング場へ問い合わせた。幸い予約は無いとのことだった。


 コロナの影響だろうか、予約なくても大丈夫ですよと言われた。すぐに吉沢に電話をした。


「明日はいかがですか?」


「はい、大丈夫です。時間は何時頃が良いですか?」


「では、町田駅のJR改札前に1時はどうですか?」


「はい、わかりました」


 二人の交際が始まった。付き合う程に広瀬の気持ちは高まっていった。いつしか結婚を考えるようになった。


 ところが、交際が始まって3カ月程経ったとき、広瀬に仙台への転勤辞令が出た。目の前が真っ暗になった。


 秋の辞令はコロナによる人員不足が影響していた。広瀬は所長としての昇進異動だった。所員は8名いた。


 営業が2名減った分、地区割等難しい問題を抱えていた。所長と言いながら割り当てられない地域を担当した。


 頭の中は常に業務のことで一杯だった。吉沢との電話も必然的に少なくなった。


 3か月も過ぎた頃、日曜日に吉沢が仙台に訪ねて来た。友人と旅行だと言う。駅近くの牛タンの店で食事をした。


 しばらく会わなかったせいか、話が途切れがちだった。何だか寂しそうだったが、相変わらず綺麗だった。


 アパートに誘ったが、友人が待ってるからとホテルへ帰って行った。帰った後、何か大きなものを失ったような気持になった。


 アパートに帰ると無性に寂しくなり、わけもなく電話をした。話に困って、年末に東京に遊びに行くと言った。


 本当に会いに行きたいと思った。2週間もすると年末になる。しかし、郷里に帰るからいないと言われた。


 年が明けると仕事が忙しくて、電話も殆どしなくなった。彼女からの電話は滅多になかった。


 それでも日は過ぎて行き、春が来た。意味もなく気持ちが明るくなって来た。今夜は電話しようと思った。


 帰りにスーパーに寄り、ビールと弁当を買った。後、枝豆を買おうと総菜売り場に行くと声をかけられた。


「先日はありがとうございました」


 見知らぬ女性からである。覚えが無くて黙っていると、


「自転車です。あの時は助かりました」


 マスクはしているが素敵な女性だ。思い出した。あの時の人だ。


「よくわかりましたね?」


「すぐわかりましたよ。身長がこんなに高い方は滅多にいらっしゃいませんから。お客さんだったのですね」


 広瀬の身長は178cmである。


                      つづく

次回は5月14日金曜日朝10時に掲載します