Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

          心の隙間 4.

「ペットボトルと言うと思い出したことがある。優先席のでのことなんだ」


 広瀬が話を続けると、


「優先席に座っている若い人多いわよね。お年寄りが傍に来ても気付かないのか席を変わらないのよね」


「若いって君も若いだろう」


「もう、混ぜっ返さないでよ」


 佐竹が菊池に笑いながら言う。


「そうなんだ。気付いているんだよね。学生風の男だったけど、堂々とスマホいじって知らん振りしてるんだよね」


 広瀬が言葉を繋いだ。すると吉沢が言う。


「きっと気付くのが遅くなってばつが悪くなったのよ。それで知らん振りをしたのじゃないかしら」


「多分そうだと思う。それでね、ちょっと間を置いてから学生風の男は立ち上がったんだよ。どうぞ!てね」


 ところがおばあさんは譲られた席に座ろうとしない。その席にはペットボトルが転がっていた。


 珈琲のペットボトルだった。半分ほど飲んである。男は気付いて慌てて手に取った。


「ごめんなさい、どうぞ!」


 おばあさんは当たり前のような顔をして黙って座った。


 実はありがとうと言ったのだが、マスクをしているし声が小さいので聞こえなかったようだ。


 学生風の男は態度で非難されたと思い、きまり悪そうにそこから離れたところに移って行った。


「わかるわ、本当に気付かなかったのよね。私もあるの。目の前にお年寄りが立ったのに気が付かなくて本を読んでいたの。隣のおばさんが席を替わったの。申し訳なくて顔を上げられなかったの」


 広瀬は吉沢の言葉を聞いて、心の優しい素敵な人だと思った。そっと見ないふりをして顔を見た。俯いていた。


「気付かないときってあるわよ。周りを見ながら座っているわけじゃないから仕方ないわよ。私は平気!」


「何だか道徳教室みたいになっちゃったな。ところでお腹空かない?近くにパスタの旨い店があるんだけど」


 佐竹の言葉に菊池が吉沢を促す。広瀬は吉沢が頷くのを見て安心した。嬉しくなって、


「良いね、行くよ」


 広瀬は嬉しそうに明るい声で返事をした。


                     つづく

続きは4月23日金曜日朝10時に掲載します

すみません。掲載遅れます。