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          心の隙間 13.

 右へ曲がると、アパートの外灯の下に彼女が立っているのが見える。部屋から出て待ってくれていた。


「すみません。遠慮なく頂きに来ました」


「いえ、お口に合うか心配ですが貰って下さい。どうぞ」


「サンドイッチは大好きなんです。ありがとうございます。頂いて行きます」


 広瀬は受け取ると帰って来た。何だかあっけなかった。途中何度か振り返った。彼女はいなかった。


 自転車はゆっくり走ったが、アパートにすぐ帰り着いた。外は暗くなっていたが心は明るかった。


 ひょっとして珈琲でもどうぞとか?はは、言われるわけないな。そう思いながら袋の中を見た。


 ビニールパックが2つ入っていた。1つはハムや卵等の普通のサンドイッチ。もう一つは果物を生クリームで合わせたフルーツサンドイッチだった。


 彩りが良く食欲をそそった。ビールを冷蔵庫から出して来た。ハムチーズサンドを口にビールを飲んだ。


 うまい!ピリッとからしが効いていた。それに刺激され、ふと思った。袋の中を確かめた。


 小さな封筒が入っていた。さっきはなぜ気が付かなかったのだろう。サンドイッチのことしか頭になかった。


 急ぐように取り出し封筒を開いた。便箋が入っていた。


〝突然のお手紙失礼致します。


 実は昨夜郷里から電話がありまして、母が腕を骨折して家業のパン屋を手伝えなくなったとのことでした。


 父母と従業員2人で営う小さな店です。急ですが明日郷里高崎へ帰ることになりました。


 せっかくお知り合いになれたのに残念でなりません。落ち着いたらアパートの引っ越しに帰って参ります。


 その時は改めてご挨拶させて頂きます。色々ありがとうございました。


 なぜか悲しくて言葉では言えません。失礼とは思いましたが、お手紙にさせていただきました。


 時節柄風邪等召さぬよう、くれぐれもお身体お大事下さいませ。                  敬具〟


 広瀬は何度も読み返した。何と返事をしたら良いのだろう。急なことに愕然とした。なぜか頭の中が白くなった。


 そして気付いた。恋をしていたのだ。しかし、自分には吉沢と言う結婚を考えた女性がいる。


 先月仙台まで来てくれた。なぜか会話すら途切れた。暫く会わないとこうなるのか。綺麗な顔が冷たく見えた。


 せっかく仙台まで来てくれたのに、広瀬のアパートには寄らずホテルに泊まった。


 それは無理だったかも知れない。二人はまだプラトニックラブのままだった。しかし、部屋に訪れてもと思った。


 そんな思いもあり、しっくりしない気持ちが残り寂しさが募った。お別れに来たのではと思ったりした。


 吉沢に会いたくて、年末に東京に行くと言うと郷里に帰るからと断られた。やっぱり別れに来たのだと思った。


 それから3カ月後、風邪の強い日だった。自転車置き場は全滅に倒れていた。その中に石崎の自転車があった。


 広瀬はスマホを取った。石崎の番号をプッシュした。


                     つづく

続き14回は6月25日金曜日朝10時に掲載します