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        心の隙間 11.

「出来ましたね。どうぞお座りください」


「おいしそう!しゃれたオードブルですね」


「でしょう!お飲み物に紅茶はいかがですか?あ、ごめんなさい。お酒は買ってないのです」


 実は冷蔵庫にビールとレモンサワーの買い置きがある。酒を出したら勘違いされると思ったからだ。


「はい、では遠慮なく紅茶をいただきます」


 一皿4種類20枚程のデイップクラッカーは、彼女の作り方を聞きながら食べた。マスクを外した顔は魅力的だ。


 広瀬は話よりも彼女の顔に魅かれてじっと見ていた。彼女も視線に気付いたようで何気なく顔をそらした。


 やっぱり帰って貰った方が良いわ。


「残りのデイップ、タッパーに入れて置きます。お持ち帰り下さい」


 彼女は立ち上がるとキッチンに立ち、4種類のデイップを詰め始めた。


「これ、お持ち帰り下さい」


 広瀬は紙袋に入れたタッパーを受け取ると立ち上がり、そのまま入口へ向かった。


 どうして立ってしまったのだろう思った。後ろ髪を引かれる思いだ。彼女は止めなかった。振り返り、


「ご馳走様でした。色々ありがとうございました」


 アパートを出て自転車を漕ぎながら、なぜか寂しい気持ちになった。悲しいようなせつないような気持ちである。


 帰り着いた広瀬はタッパーを冷蔵庫に入れた。缶ビールを取り出し飲み始めた。


 面白くも何ともないと男と思われたようだ。黙っていていてはいけない。何か話をしなくてはと思っていた。


 彼女はデイップを作りながら、レシピや手順を教えてくれた。はいとわかりましたと言うしかなかった。


 それにどれを食べてもおいしいですねとしか言わない。思い出すと自分でも自分が嫌になる。


 冷蔵庫から二本目のビールを出して飲み始めた。だから彼女なんか出来ないんだ。ふと吉沢を思い出した。


 そうだよ僕には彼女がいるんだ。スマホを取ると彼女に電話した。留守電になっていた。土曜日で休みなのに…。


 石崎は広瀬が帰ってから反省していた。せっかく知り合いになれたのに、変に気をまわして帰してしまった。


 広瀬が帰ってから、部屋の中ががらんとして落ち着かない。私いつもこうだわ。勝手な思い込みで壊してしまう。


 だから、男の人と知り合いになれないのね。広瀬さんは無口だけど良い人なのよね。何か話は無かったのかしら、


 趣味とか最近の事柄とか考えれば色々あったのに。私駄目ね。だから社交性ゼロとみんなに言われるのね。


 警戒心だけ強くてどうにもならないわ。お酒でも飲もうかしら。レモンサワーがあったわ。その時電話が鳴った。


 見ると広瀬からだった。


「先程はありがとうございました。お借りしたタッパーお返ししたいのですが、明日お持ちしても良いですか?」


 石崎はなんて答えようかと頭が高速でぐるぐる回った。


                      つづく

次回は6月11日金曜日朝10時に掲載します