Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

     心の隙間 10.

 彼女の自転車の後から自転車でついて行った。方向が同じで、あれっと思った。


 広瀬のアパートへ後300m程の所で左へ曲がった。曲がるとアパートが並んで建っている。


 その2つ目のアパートの2階に上がって行った。2階の一番奥が彼女の部屋だった。


 ここなら、広瀬のアパートから歩いて5分足らずの所だ。偶然とは言え、嬉しくなった。


「ちょっと、待ってて下さいね」


 ドア前で3分程待たされた。ドアが開いた。彼女が優しい眼差しで会釈しながら言う。マスクで口元は見えない。


「どうど、お入り下さい。散らかってますけど」


 靴を脱ぎ、逆向きに直して上がった。4畳半ほどのキッチン兼居間である。テーブルが有り、椅子が2つあった。


「お座り下さい。珈琲と紅茶どちらが良いですか?」


「あっ、すみません。でしたら珈琲お願いします」


 ずうずうしくも座りながら、珈琲お願いしますと言ってしまった。出された珈琲をマスクを外して飲んだ。


「どうぞ、いま下ごしらえをしますので飲んでいて下さい」


 彼女もマスクを外した。美人と言う程ではないが気さくな感じの顔だ。男女共に誰にでも好かれる人だと思った。


 彼女は自分を信じて部屋に入れてくれた。紳士扱いをしてくれたのだと思う。それでも信じられない気持ちだ。


 おまえは人畜無害だからな。佐竹を含む友達からよく言われた。顔だけでなく性格もそうだと言う。


 そう言われても、少しも気にならなかった。何の問題も無い。それで良いじゃないかと悪い気はしなかった。


 彼女はキッチンで下ごしらえをしていたが20分程して、


「すみません、このクラッカーお皿に並べていただけますか?あっ、手を洗って下さい」


 彼女はキッチンシンクの前を開けた。広瀬はそこに立って手を洗った。マスクはしたままである。


「これで拭いて下さい」


 さっとタオルを渡された。拭き終わると見ていたかのように、皿とクラッカーの箱を渡された。にっこり笑って、


「並べていただけますか?」


 クラッカーは買い置きがあったようだ。N社の丸いクラッカーである。広瀬も小腹が空いた時用に常用している。


 彼女は今頃になって後悔していた。部屋に男の人を入れたのは初めてである。どうしてこうなったのか。


 スーパーのレジで支払いを彼がした。当然割り勘にするつもりでいたのに彼が払ってしまった。


 申し訳なくて一緒に作りましょうと言ってしまった。作り方を教えてあげようと思ったからである。


 今、とんでもないことを言ったものだと反省している。男の人を部屋に入れてしまった。


 そんなことは起こらないと思うが、逆に変な女性と思われたかも知れない。私、そんな女じゃないわ。


 今さら、どうしょうもないわ。早く作って、持って帰って貰うわ。私、どうかしてたわ。


 幸い、クリームチーズは便利だった。レンジで軽く温めて明太と混ぜた。キウイとサラミのみじん切りも同じく。


 ツナ缶と玉ねぎのみじん切りを薄酢でさらし絞って混ぜた。アボガドとキウイはマヨネーズとしょうゆを加えた。


 4種類のデイップが出来上がった。クラッカーに乗せるだけである。今、彼が皿に並べている。


 マスクしているが、にこにこしているのがわかる。何だか気の毒になって来た。


                      つづく

続きは6月4日金曜日朝10時に掲載します

※掲載変更します。5日土曜日に変更します