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      心の花 7

 窓を開けると冷たい空気が部屋中に広がった。空はどんよりとして今にも雨が落ちてきそう。


 昨日の酒が残っているのか、頭もどんよりとして冴えない。時計を見ると午前11時半を過ぎている。眠りついたのが午前3時頃。良く寝たものだ。


 水がおいしかった。シャワーを浴び髭を剃ると、やっと頭がはっきりして来た。


 この言いようのない寂しさは何だろう。木田は失恋したのだと気付いた。


 それでも、杉野の優しく微笑んだ顔が頭から離れない。


『私は最初の日の親切を勘違いしてしまった。身の程を知れとはよく言ったものだ』


 そう思い直すが、せつない気持ちは消えない。三か月の短い恋だった。


 ビールを飲もうと冷蔵庫を開けた。一本も無い。昨日全部飲んでしまったのだ。買いに行こうと思って、杉野のことがまた頭に浮かぶ。


『ビールが無い。買いに行かなくてはならない』


 理由がついた。木田は思い立つと早かった。


 スーパーは土曜日の昼時とあって混んでいた。


 レジを確かめた。二番目のレジに杉野がいた。胸がきゅっとした。木田は思い直した。


『考えてみれば、嫌だとか嫌いだとか言われたわけではない。改札で彼女が素っ気なかっただけだ。通勤時間はみんな急ぐ。当たり前のことだ』


 木田はビールとつまみに弁当をかごに入れてレジに行った。


 三番目のレジの方が並びが少なかったが、通り過ぎて二番目のレジに並んだ。なぜか胸がどきどきして来た。


 次の次が木田の番だ。杉野の真剣な顔が見える。なんて素敵だろう。綺麗だ。木田は胸の鼓動がますますどきどきして来た。


「いらっしゃいませ!」


 杉野はにっこり微笑んで挨拶した。木田も嬉しくて、


「昨日はどうも!」


 とにっこり笑いながら言った。


 杉野はその言葉を聞いてぱっと明るくなった。


『何でもなかったのね。私の取り越し苦労だったのね』


昨夜の悲しい気持ちが嘘のように晴れた。嬉しくなった。


 杉野は木田が並び始めたときから、心が高鳴っていた。


                                つづく

次回第8回は9月8日金曜日午前10時に掲載します。