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    心の花 6

 秋はもう直ぐ終わりである。大気が冷たい。杉野には頬に当たる風がひんやりと気持ちよかった。そして爽やかな気持ちになっていた。


 何よりも気掛かりだった友人の、お見舞いに行けたことが大きいと思う。


 胃潰瘍での入院だったが経過が良く、後1週間ほどで退院できるそうだ。女子大時代からの長い友人で私と同じ独身である。


 スーパー店内のレジはやっと空いて来た。時刻は19時半を過ぎ、間もなく20時になる。


 木田は来ない。杉野はそわそわした。店内を見渡すが木田はいない。とうとう閉店の22時を迎えた。


 私、いけなかったのかしら、せっかく声をかけていただいたのに、私は下りです。行ってらっしゃい!と階段を下りてしまった。  


 お気を悪くされたのかしら?お忙しい時間だからお邪魔になってはと思ってのことだった。


 アパートに着いたのは22時半を少し過ぎていた。杉野は気になってアパートの裏から2階の部屋を確かめた。木田の部屋は電気が点いていた。杉野は悲しくなった。


 木田は帰宅したばかりだった。駅に着いたのは22時を少し過ぎていた。スーパーは閉店している。なぜかせつなかった。


 同僚に誘われ、焼き鳥屋で飲んでしまったことを悔いた。杉野に会いたかった。


 同僚の誘いに乗ったのは、今朝のことで杉野が自分にさほども関心がないと気付いたからである。単なる隣人であった。


 それはそうだ。四十近くなって、うだつの上がらないサラリーマンなんかに関心を持つ方がおかしい。


 冷蔵庫から缶ビールを出して飲み始めた。


 杉野のにっこり微笑んだ顔が浮かぶ。なぜかせつない。


 木田はその笑顔を消すように思い直した。女性の笑顔は気をつけなくてはいけない。


 十一年前が思い出されてきた。妻はにこやかな笑顔をして僕を裏切っていたのだ。二年近くも。


 明日は休みだが何の予定もなし。缶ビールがまずい。


 少し寒くなってきた。後一週間で十二月。また冬がやって来る。


                                   つづく

次回第7回は9月1日金曜日朝10時の掲載です。