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   心の花 5

 「あら!おはようございます」


 杉野は立ち止まって挨拶を交わした。


「さ、行きましょう!」


 木田は杉野を促したが、今日は遅刻しても良いと思った。


 改札を入ると杉野は立ち止まり、


「上りですか?私は下りです」


「はい、新宿です。杉野さんは?」


「藤沢に行きます。それではここで失礼します。行ってらっしゃい!」


 あっさり二人は、上りと下りで別れ別れになってしまった。


 木田は落胆した。つい今まで、今日はラッキーな日だ。電車の中でどんな話をしようかと心を膨らませていた。


 足取りが急に重くなった。ホームに並びながら、向かいのホームに杉野を目で探していた。見つからなかった。


 杉野は吊り革につかまり、見るともなく流れゆく窓の景色を眺めていた。どうも木田が気になってならない。


 あの日、ごみを持って慌てるように追い抜いて来た木田に、声をかけたのが始まりだった。


 まさか、店のお客様だとは思わなかった。今日は友人のお見舞い。金曜日は午後からの勤務であり、それを利用してのことである。


 お弁当や買い物から独身だとわかる。きりっとした顔立ちが素敵だった。私みたいなおばさんを、とても相手にしてくれるとは思えない。


 私も来年四十歳になる。親の勧めで三回お見合いしたが、全て私から断わった。


 以来、お見合いの話は無くなった。フィーリング合わないと言うのか、この人と一緒に住むのかと思うと嫌になった。


 比べるわけではないが木田は違った。きりっとした素敵な印象の反面、お店に買い物に来た時の木田は何となく頼りなさげで可愛い感じがする。


 こんなことを思うなんて、やっぱりおばさんになったのかも知れない。


 今日は木田の買い物に来る日だ。杉野は何だかわくわくしていた。つづく                                

次回第6回は8月25日朝10時に掲載します。