Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

      女の誤算 8

 興信所では探索するに正当な理由を聞かれた。当然のことだが個人情報や、その他の問題発生を恐れるからだ。


 紗江子からの手紙が役立った。三日目に興信所から見つかったとの連絡が入った。転居先住所のみの依頼のせいか早かった。


 津田は退社後直ぐに興信所へ寄ったが、そこを出たのは十九時を過ぎていた。直ぐにでも行きたかったが、夜間の訪問は避けた。幸い明日は土曜日、休日だ。


 この夜はなかなか寝付けなかった。最悪の事しか考えられなかった。他に相手がいたとしたらいつ会っていたのだろう。


 週末はもちろんのこと、御苑での告白の後はほぼ毎日会っていた。しかも、事前に決めることなく成り行き任せ。会う約束は津田が一方的に決めていた。どう考えても腑に落ちなかった。


 なぜか、紗江子の寂し気な顔が浮かび、せつなくて堪らなかった。津田の心は張り裂けそうだった。愛してる。こんなに人を愛したのは初めてだ。眠りついたのは明け方だった。


 紗江子は津田に貰ったモーツァルトのヴァイオリンソナタを、何度も繰り返し聞いていた。どこかで胎教にはモールツァトの曲が良いと聞いたことがあるからである。


 それにしても心が穏やかになる曲だ。津田のにこやかな顔が浮かぶ。『この曲はね』と語りかけてくるようだ。


 津田のアパートでは、一緒に色んな曲を聴いた。クラシック音楽の良さを再認識させられた。


 楽しかった。身体を寄せて一緒に聴いた。言葉はいらなかった。


 いつの間にか涙がこぼれ落ちていた。


 お腹の子はあなたの子よ。津田さんあなたの子よ。心の中で叫んでいた。声を上げて泣いた。会いたい、会いたい津田さんに会いたい。


 計画になかったことである。紗江子は津田を愛してしまっていた。


つづく