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      女の誤算 7

 今年は暑い夏になるという。海に近い閑静な湘南の住宅街。アパートはその中にあった。


 紗江子が引っ越して来て二か月になる。出産環境に良い所を探した。駅から歩いて十五分程の距離である。


 会社は来月いっぱいで退社することにした。それ以降はお腹が目立ってくるからだ。


 津田に黙って引っ越したことは、思い出すたびに胸が痛くなる。


 素敵な人だと思ったが計画には無い。母子家庭計画は計画通りだ。


 津田は朝のホームで紗江子と二日続いて会えなかった。病気かも知れないと気が気でなかった。


 その夜アパートを訪ねた。電気は消えていたが、具合が悪くて寝ているのではと思い、心配で小さめの音でノックしていると、丁度隣の住人が帰って来て、昨日引っ越したと言う。


 勤務先など何も肝心なことは聞いていなかった。心がどん底へ落ちたような気がした。また同じことか。自分が情けなかった。


 自宅へ帰るとポストへ郵便封筒が入っていた。


…大変お世話になりました。急な事情が出来まして引っ越すことになりました。短い間でしたが幸せでした。ありがとうございました。心からお礼申し上げます。


 最後のご挨拶も出来ず心苦しいのですが、やむを得ぬ事情がございましてのこと、ご容赦下さいませ。


 津田様のお幸せをお祈りいたします。 紗江子…


 と流れるような綺麗な女文字で書いてあった。


 次の日、津田は役所に行った。係りの対応は為す術もなかった。転居先はむろんの事、住民票の移動の有無すら教えてくれなかった。津田は途方に暮れた。


 津田には二度目の恋だった。最初の恋は七年前二十九歳の時に破れた。心から愛した人は他の人と結婚。天秤にかけられたと思った。以来女性不信になった。


 紗江子がそれを解き放ってくれた。どんなことをしても紗江子に会って事情を聞きたかった。


 捜しあぐねた津田は興信所に依頼した。

 

                      つづく