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     女の誤算 2

 朝のホームはいつも変わらない。乗る人も乗る位置も乗る人の数も。


 紗江子にはいつも気になる男(ひと)がいた。ホーム前面に立ち、背筋がピーンと伸び、対抗ホームを真っすぐに向いている人だ。


 堀の深い横顔が素敵だった。いつも右手に黒のビジネス鞄を下げている。


 電車が入って来た。紗江子は男に続き乗車した。座席は満席で男の立つ位置も決まっていた。


いつものように男は、入口近くの座席前に立った。紗江子はその左に立った。


 男の身長は紗江子の顔半分ぐらい高かった。175cm程はあろうか。引き締まった感じがして体形も素敵だった。


 三つ目の駅で男の前の席が空いた。


「どうぞ!」


 とその男に席を勧められた。


「ありがとうございます」


 紗江子はお礼を言って座った。


 この人優しい人。真っ直ぐに前を向いた顔は凛々しかった。視線を感じたのか、にっこり微笑んで沙江子を見た。


 紗江子はどぎまぎしてしまった。見つめていたのがわかったのかしら。紗江子も照れて微笑んだ。


 いくつぐらいかしら、微笑んだ顔は童顔だった。思ったより若い。三十代半ばぐらいかしら。


 終点新宿に着くと、お互い軽く会釈して別れた。


 次の日も同じ電車だった。男は同じ場所に立った。紗江子も同じくその左に立った。


 三つ目の駅で席が空いた。


「どうぞ!」


 男はにっこり微笑んで席を勧めた。


「いえ、どうぞ」


 紗江子は一瞬躊躇したが、男に勧め返した。その間に男の右側の中年の男が座ってしまった。


 この人はここで席が空くのを知っていたのだ。紗江子は申し訳ない気持ちでいっぱいであった。


「すみません」


 男に謝った。


「いいえ、気になさらないで下さい」


男はにっこり笑って言う。素敵な笑顔だった。


                      つづく