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       女の幸せ 4

 太めの禿げた男は50歳前後であろうか、履歴書を出すように言う。さっと目を通すと、


「肉体労働ですよ。建築資材の運搬と管理です。大丈夫ですか?」


「ほう!剣道二段ですか」


「はい、体力には自信があります」


「じゃ、明日からお出で下さい」


「えっ、採用していただけるのですか?」


「明日朝8時に出社して下さい。作業着と靴はこちらで用意します。弁当とタオルは用意して来て下さい」


 簡単に採用された。これで良いのだろうか?駅にマイクロバスが7時30分に迎えに来るそうだ。


「どんな仕事なの?」


「建築資材の運搬らしい。タオル持って来いと言うからには相当の肉体労働だと思う」


「タオルがどうして?」


「汗を拭くのに、ハンカチ程度ではだめだと言うことだろう」


 翌朝弁当を持って6時に家を出た。バスには和夫を入れて8人乗っている。挨拶を交わすだけで誰も口を利かない。


 年齢はまちまちで50歳代くらいまでいる。5分で会社に着いた。着替えると現場監督の先導で全員でラジオ体操をした。


「今日から務める山本さんです。皆さんよろしく。木村さん仕事を教えて下さい」


 木村は50過ぎの年配者だった。鉄の棒を渡された。直径2cm長さ150cm程である。


 仕事は建築現場の足場に付いたコンクリートを、その鉄棒で叩いて落とす仕事だった。


「タオルを口に巻いてね!埃が凄いから慣れるまで大変だよ」


 タオルは汗拭きでなくマスク代わりだった。コンクリートの粉埃はマスクでは全く役に立たないくらいの量だった。


 足場は縦2m横約60㎝高さ7㎝、全ておおよその寸法だがかなり重かった。


 寝かせておいて、思いっきり鉄棒で叩くとこびりついたコンクリートが面白いように剥がれ落ちた。


 掛け声とともに思いっきり叩く。バン!バシッ!耳をつんざく程の音がする。力任せに叩かないとコンクリートは剥がれない。


 1時間で15枚程叩いた。叩き続けているうちに頭が無心になった。気分がスカッとして来た。


 剣道の面打ち鍛錬のようだ。仕事をしていると言う気は無くなった。就職や人間関係等煩わしい事は頭から消えた。


 ブザーが鳴った。昼食時間である。知らない人達と一緒に食事をするのかと思うと気が滅入って来た。


 せっかく、スカッとした気持ちになったのにと残念だった。しかし、思いがけない昼食時間になったのである。


                        つづく

次回は11月9日金曜日朝10時に掲載します