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     女の幸せ 3

 和夫は後悔していた。私が辞める必要があったのだろうか?この年の瀬に来て重すぎる荷物を抱えてしまった。


 再就職がこんなに難しいとは思わなかった。何か特技があるわけでなし、事務職の求人は少なく途方に暮れた。


 駅までぶらりと歩いた。丁度電車が到着したようで改札を人がぞろぞろ出て来た。一緒になって引き返した。


「どこに行ったの?ごめんなさい。責めるような事言ってしまって……」


「煙草買いに行ったのだよ。だが止めることにした」


「いいわよ、私が買って来てあげる」


「違うよ。吸うのを止めることにした」


「止めるって?煙草を止めるってこと?」


「そうだよ。子供に害だからね」


「本当に?嬉しい!でも本当に?」


「来月からお小遣い1万円減らして良いよ」


「助かるけど、大丈夫?」


「お金があると、煙草買ってしまうからね」


「ありがとう、それじゃ5千円にするわね」


「ありがたいけど、1万円にしてね」


 和夫はこれから起こる生活費のことも考えていた。それは言葉に出さなかった。


「あのね、サバラン買って来てあるの。紅茶で食べましょう」


「良いね!久しぶりだな」


「そうよ、虫の知らせ…と言うか?良い知らせね。何だか買って来ちゃったの」


「心配させちゃったね。仕事はすぐ見つかるから心配いらないからね」


「はーい!心配してません。紅茶入りました」


「うまいね!このサバラン。ブランデーシロップがたっぷりしみ込んでいる」


「和夫さんが喜んでくれると、私幸せ!」


「あれ?どこかで聞いたセリフだな。ま、良いか!」


 二人は顔を見合わせてにやりとした。ささやかだが幸せなひと時だった。


 次の日、和夫は新聞広告『三栄工業日給8千円交通費有』の小さな広告を見て面接に行った。


 就職はじっくりと捜すことにした。その間はアルバイト的に仕事をしようと思ってのことであった。


 プレハブが事務所だった。中へ入ると、太めの禿げた男が一人いるだけだった。


「面接の人?」


 和夫が名乗る前にその男が聞いてきた。


                        つづく

次回は11月2日金曜日朝10時に掲載します