Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

       女の幸せ 2

 高柳が席に座るのを見届けると、深々と頭を下げた。拍手がさっと止み、場内の視線が新郎に向けられた。


「高柳様、貴重なお話ありがとうございました。洋子さんに縁談があったことは、今初めて知りました」


 司会は予定にないことで、慌ててマイクを持って行く。新郎は受け取ると、


「お話をお聞き致しまして、改めて洋子さんの素晴らしさを再認識致しました」


「私はお金も力もありませんが、洋子さんを必ず幸せにします」


「それが私の幸せです。私が幸せになるには、洋子さんを幸せにしなくてはなりません。ですから、洋子さんを必ず幸せにします。高柳様どうぞご安心下さい」


 場内に大きな拍手が沸き起こった。高柳は無言で頷いた。そして目を閉じた。


 二年の歳月が流れた。街にはまだ12月の始めだと言うのにジングルベルのメロディが流れていた。


 新婚家庭の遅い夕食の最中だった。


「和夫さん、今度のボーナスでテレビ買い替えましょうよ。50インチの大きいのに……」


「もう少し待ってくれないか、実は話そうと思っていたが先月会社を辞めた。ボーナスは出ない」


「えっ、それ本当?……。何の相談も無しに辞めたのね」


「会社の状態が悪くて辞めざるを得なかったのだ」


「辞めてくれと言われたの?」


「そうじゃない、社長が全員を集めて相談した。結論的に言うと人員を半分にしないと会社は倒産する。しかし、誰に辞めてくれとは言えない。自主退職をお願いしたいと」


「それであなたが辞めたの?」


「仲間は色々問題を抱えていて、辞められない奴ばかりだった。誰かが辞めないと会社は倒産する」


「あたし、妊娠してるのよ。来年の夏には子供が生まれるのよ。勤めも長くは続けられないのよ」


「わかってるよ。今就職先探している。年明けまでには決まると思う」


「生活費はどうするのよ?」


「今月の末から失業保険が出る。少ないが我慢してくれ」


「この一カ月間、何してたのよ。お弁当持って……」


「ハローワーク以外は、図書館と公園で時間をつぶしていた」


「そんな……」


 洋子は絶句した。来年は子供が生まれる。子供を交えた幸せな家庭を心に描いていた。急に世の中が暗く思えた。


「ちょっと出かけて来る」


「まだ食事の途中よ。どうしたのよ!」


 和夫は都合が悪くなると、いつもその場を離れた。


                        つづく

次回は10月26日朝10時に掲載します