Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

          女の幸せ 1

 「続きまして、新婦の祖父でいらっしゃいます海洋実業株式会社会長、高柳洋一郎様にご挨拶をいただきます」


 右手で杖を突きながら、コツコツと音をさせながらゆっくりと上手に進んだ。


「ご紹介頂きました新婦祖父の高柳と申します。高い席から恐縮ですが、一言ご挨拶申し上げます」


 歳の頃七十半ばであろうか穏やかな顔をしているが、毅然とした様子を漂わせている。


「新婦洋子は私の初孫です。名前も私の洋一郎からつけさせてもらいました。私の命より大事な孫です。結婚相手も私なりに考えておりました」


 高柳は一呼吸間をおいて続けた。


「しかし、洋子には断られました。正直な所、その相手は知力と財力があり、しかも手腕に長けており二社の経営を営んでおります。先方も乗り気で八分どおり話は進んでおりました」


「ところが洋子は何としても受け入れません。『私は私の選んだ人と結婚します』と言うのです。現実を見なさい。男には力と運がいる。新郎にはそれが無い」


 場内はざわめいた。新郎は青ざめた。高柳は気にも留めず話を続けた。


「と言うと、洋子は『私が結婚するのです。おじいさんが結婚するのではありません』ときっぱりはねのけました」


「私は長年事業を営んで来ました。同時に色んな人を見て来ました。研究もしました。それは会社の存続に関わるからです」


「しかし、当たり前のことですが会社と結婚は違うと言うことを孫に教えられました」


「それでも私は、男は仕事が出来なければだめだと今も思っています」


 高柳は新郎を見た。その視線を見た場内は水を打ったように静まった。高柳は話を続けた。


「しかし、洋子は言いました。『幸せはお金や力ではありません。一緒にいて幸せと思えることです。たとえ貧乏しても幸せです』私はもう何も言えませんでした」


 高柳は再び新郎を見た。


「山本和夫さん、洋子をよろしくお願いします」


 場内が大きく拍手に包まれた。


 その時、新郎山本がすくっと立ち上がった。


                       つづく

次回は10月19日朝10時に掲載します