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        偽浮浪者 9

 予約した居酒屋は全てボックス席だった。相向かいに座った白井は遠慮するように聞いた。


「住田さんに聞きたいことがあるの。良いかしら?」


「良いよ!何でも聞いて?」


「友達が来月誕生日なの。男の人って何を喜ぶかわからないの。何が良いかしら?」


「ふーん!幾つぐらい?」


「同い年なの。学生時代から付き合っているの」


「えっ!その人まさか恋人?」


「そうなるかしら?学生時代から付き合ってるの。3年になるわ」


 住田は一瞬言葉を失った。そうか、それが言いたくて誘いに乗ったのだ。


「何が良いかな?」


 返答に困り、住田は何でも無いふりをして質問を反復した。心は複雑な気持ちだった。


 白井は会社の先輩女性社員に忠告された。朝当番を二人でしていると社内の噂になっているらしい。


 社内恋愛は禁止ではないが色々と難しい。白井に気持ちが無いのなら早いうちにはっきりした方が良いと。


 二人の飲み会はそれ以降口数が少なくなり、それから30分程で解散した。


 週が明けたが住田の心は閉ざされたままだった。出社するのに気が重かった。昨日はぎりぎりの出社となった。


 今日は火曜日、当番であり専務との食事の日でもある。思い直してアパートを早く出た。浮浪者は見かけなかった。


 いつものコンビニで珈琲を飲んでいた。


「おはようございます。ここいいですか?」


 先週の彼女が隣に座った。席はここしか空いていない。


「あら、何だか元気がないみたい」


「えっ、どうしてですか?」


「先週は何だか嬉しそうで、おかげで私も元気を貰ったのよ」


 住田はお姉さんと話しているようでつい気を許して、


「失恋したのです」


「そーお、良い勉強したのね」


 にっこり笑いながら言う。


「良い勉強ですか?ひとごとですからね」


「そうじゃないのよ。私はベテランだから言えるのよ」


「えーっ、お姉さんのように綺麗な人が失恋するのですか?」


「お世辞は良いわよ。星の数ほど失恋したのよ」


「嘘でしょう?でしたらどうすれば良いか教えて下さい」


「良いわよ、今度飲みに行きましょうね」


 二人は思わぬ方向へ話の進展をみた。電話番号を交換し、明後日午後6時に待ち合わせすることになった。           


つづく

次回10回は4月27日朝10時に掲載します。