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        偽浮浪者 8

 住田もサンドイッチを買って来た。お礼を言って座った。


「ありがとうございました」


 彼女はにっこり頷いた。その優しい微笑みは印象的で住田の心に残った。


 白井の手伝いは来週で終わる。心躍って早起きして来たが何事も無かった。


 始業時間にはまだ時間がある。もしやと思い専務室へ行った。専務は出社していた。


「ありがとう。良く知らせてくれたね。今度飯でも食いに行くか?」


 専務は手帳を広げながら、


「来週の火曜日どうだ?」


 住田に予定など無く即座にはいと返事をした。


 自席へ戻る途中、コピー機の前で白井があたふたしている。


「どうしたの?」


「紙が詰まったみたいなの」


 住田は慣れたもので、3か所の蓋を開けて詰まった紙を引き出しすぐに直した。簡単だった。


「直ったよ。もう大丈夫!」


「ありがとう!私、機械苦手なの」


「ね、今日帰りにちょっと飲みに行かない?」


「良いわよ」


 住田は拍子抜けした。半分冗談で、断られるのを承知で誘ったのだ。急に小声になって、


「電話番号教えて、後でメールする」


 詰まった紙の端とボールペンを渡した。白井はさらさらと番号を書いた。


 住田は信じられなかった。席に座っても顔が妙にほころびて来て困った。


 この夜の専務はいつものクラブにいた。


「その会社の名前は言えません。でもね、結構大きい会社みたいよ」


「業務上の秘密ってやつね。で、その客は幾つぐらい?」


「そうね、60歳は過ぎてるわね。会長さんよ」


「そうか!ママの良い人か?」


「そうよ、石さんと同じよ」


 今日は新任の部長を伴っての懇親会である。


 先日の話以上の事は何も聞けなかったが、偽浮浪者の話は実在と確信を持った。


 そして、専務の石田は自分自身が体験してみて、益々興味を持った。


                      つづく

次回9回は4月20日朝10時に掲載します。