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          偽浮浪者 6

 専務室のドアをノックして、


「住田です」


「どうぞ!」


「失礼致します」


「そこに座りなさい」


 応接ソファーに勧められた。石田専務も待っていたかのように立ち上がり、向かい合わせに座った。


住田は何の話かと緊張していたが、仕事は慣れたかとか学生時代のサッカー部の話等を聞かれただけで、どうと言う話では無かった。


 ただ、一つ頼まれたことがあった。出勤の際浮浪者を見かけたら、その日のうちに知らせてくれと言うことだった。


 席に戻ると課長が、


「どうした?何かあったのか?」


 と心配そうに聞く、


「今朝、出勤途中で専務にお会いしたのです」


 と言うと、なーんだと言う顔をしてパソコン画面に目を移した。


 住田は気になって仕方ない。専務はなぜ浮浪者のことを気にするのだろう。


 浮浪者の意識が良くわからない。働こうと思えば仕事は何だってあるはずだ。怠け者なのだ。


 しかし、待てよ。この間見かけた浮浪者は、空き缶等を拾っていた。怠け者と言うわけでは無いのか?


 すると、やはり仕事が無いのだろうか?思案にあぐね、先輩に聞いてみた。


「木村さん、浮浪者は仕事が無いからなるのですか?」


「ずいぶん突飛なことを聞いてくるね。もちろん仕事が無いのだろうが、他に色々ある場合があるだろうな」


「他に色々って何ですか?」


「身を隠したい場合だね。理由は借金であったり犯罪者であったりするようだな」


「犯罪者ですか?浮浪者って怖い人もいるんですね」


「学者もいるらしいよ。それから潜入ルポライターとか結構多彩らしいよ」


「へー!凄いんですね」


「住田君!辞表持って来なさい!明日から浮浪者になれば良いでしょう」


 課長が口を挟んだ。すかさず木村が、


「住田君、仕事中の話ではありません!そう言う話は休憩時間とかに聞きなさい」


                    つづく

次回7回は4月6日金曜日朝10時掲載します。