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     偽浮浪者 4 

 石田は水割りを口に含みながら、


「ほう?聞きたいね。国家機密の話だね」


「そうよ、石さんいらしたらお話しようと思ってたの。浮浪者の話よ」


「浮浪者?ずいぶん落ちたなあ、何だそれ?」


「この池袋界隈の浮浪者には、偽物がいるのですって」


「ほう!」


 と驚いて見せて、


「本当は社長だったとかお金持ちだったとか言うありふれた話か。つまらないね」


「いえ、全然違うんですよ」


「じゃ、お涙頂戴の話だろう」


「研修ですって、役員の」


「役員研修?何だそれ」


「役員は50代以上が多いから独断と偏見に満ちた人が多いらしいの」


「確かに会社の役員は50代以上が多いな。それでどう言うことだ」


「浮浪者を経験させるらしいの」


「ほう!面白そうな話だな。理由は?」


「人間になるためだそうよ」


「浮浪者だって人間だよ」


「そう言う意味じゃないの。いつもは部長さんとか専務さんとか呼ばれて威張っているでしょ。石さんのことじゃないわよ」


「ハイハイそれで?」


「浮浪者と見ると世間の目は冷たいでしょう。その視線に堪えられるかどうか」


「なるほど肩書の無い自分を見る良い機会になる。しかも浮浪者への冷たい視線を浴びる。なかなか経験出来ないことだ。しかしそれだけではないような気がするが・・・」


「そこなのよ!ごみ拾いさせるのですって、ごみや空き缶に吸い殻。出来るだけ人の多い所を選ぶのですって」


「それは具体的に人の為になることだね。浮浪者をさせる理由にもなる。一石二鳥とは考えたね」


「でもね、その話をされて冗談でしょうと笑う人が殆どだそうよ。その人はそれで終わりですって。怖いわね」


 朝、7時45分。事務所は煌々と照明が明るく空気が爽やかだった。


 早くも5人の社員が出社していた。始業は⒐時である。


 住田は白井のそばに行った。


「おはよう!手伝うよ」


「おはようございます。いつもすみません」


 白井は嬉しそうに笑顔で応じる。


 二人は昨年の同期入社である。 


                      つづく

次回5回は3月23日朝10時に掲載します