Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

       偽浮浪者 2

 男は次の日から姿を変えていた。濃紺のスーツ。白のワイシャツに明るいブルーの単色のネクタイ。


 顔には黒のロイド眼鏡。どこにでもいる会社員姿。両手は手ぶら。缶拾いなどはしない。


 男は先日缶をはじき飛ばされた近くの自販機の横に立っていた。


 今日で4日目。ついにあの若い男が来た。相変わらず急ぎ足で前を通り過ぎて行った。


 男はさらに急ぎ足で若い男の前に出た。


「おはよう!住田君早足だね」


「あっ、専務!おはようございます」


「元気いっぱいだ。急ぐのかね?お茶でもどうだ」


「はい、今日は朝の当番です」


「じゃ。又にしよう」


「いいえ、少しくらいなら大丈夫です。よろしくお願いします」


 出社時刻は9時である。ここから会社までは歩きを含めても20分で着く。お茶する時間はたっぷりあるはずである。


「大丈夫か?無理しなくて良いんだよ」


 実は、今日は住田の当番では無かった。


 毎週金曜日は同僚の白井貴美子が朝の当番で新聞等を各部署へ配布する。それを何気なく手伝うことである。


 社員70名の中小企業は、社員全員が顔見知りである。それは良い事でも悪い事でもあった。


 住田は白井の喜ぶ顔が嬉しい。今日も昨夜から楽しみにしていた。しかし、専務の誘いでは断れなかった。


「そうか、朝の当番か?それでは時間無いね」


「いいえ、15分程でしたら大丈夫です」


 二人は直ぐ近くの喫茶店に入った。


「引き留めて悪かったね」


「いいえ、実はいつも会社近くのコンビニでコーヒーを飲んでから出社します。だから同じです」


いつもこんなに早く出社するのか?」


「いいえ、朝の当番の時だけです。火曜と金曜だけです」


 住田はの当番は火曜日だけだが、金曜日は手伝いとは言えなかった。


「そうか、偶然とは言えびっくりしたね」


「専務はこの近くにお住まいですか?」


「いや、目白に住んでる。今日は少しわけがあってね。ところで、君にちょっと聞きたいことがあってね」

                      

つづく

 次回3回は3月9日金曜日掲載します