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    偽浮浪者 1

 浮浪者と一見してわかる男。両手に手提げ紙袋。背中に傘の入ったリュックらしき袋を背負っている。


 歳は不明だが60歳は過ぎているだろうか。人品卑しからず。ぼろはまとっているが、こざっぱりとしている。


 缶を拾い集めているのだろうと思ったが、紙屑のような物も拾っている。


 小さな吸い殻も拾っている。ひしゃげた吸い殻等どうするつもりだろう?


 ふと興味が出て見ていると。獲物を見つけると立ち止まり、両手の紙袋を地面に置き、空いた手で片方の袋に入れている。


 行く方向が同じなのでそのままついて行った。すると男は思いがけないことをした。


 自販機の横に置いてある空き缶入れの前に来ると、男は紙袋から拾い集めた空き缶をそこに入れた。


 道なりにコンビニの前に来た。


 コンビニのごみボックスにさっき拾った吸い殻や紙屑などを入れている。終わるとその袋をたたんで片方の紙袋に入れた。


 獲物では無かったのである。ごみや空き缶を拾い、路地をきれいしていたのである。


 ここは池袋北口。飲食店街である。男は毎朝七時、駅付近の路地をごみを拾いながら一周していた。


 通勤前のこの時間はまだ清掃が行われず、昨夜の賑わいの名残りが、まだあちこちに残されていた。


 男はいつものように道路わきに捨てられた空き缶を拾って紙袋へ入れようとしていた。


 そこへ鞄を小脇に抱えた若い男が走りながらぶつかった。


 同時に空き缶が弾け飛んだ。


「馬鹿野郎!もっとはじに寄れ!」


 男は若い男を見た。その瞬間、顔を隠すかのようにさっと下を向いた。


 ぶつかって来た若い男は急いでいるとみえ、そのまま走り去った。


 その日から、ぷっつりとその男の姿を見かけなくなった。


                       つづく

次回2回は3月2日朝10時に掲載します