Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

              人込み 9

「雲隠れ?会社は倒産したの?」


「そうよ、だから失業してるの。半年前よ」


「あれ?自己退社と言わなかった?」


「倒産と言うと、あれこれ聞かれて閉口したのよ」


「そう言うことか。で、その男は今どうしているの?」


 麗子が見間違えたのはその男だった。なぜか咄嗟に嘘をついた。10年も経つと懐かしさが先に立ち引き返した。


「知らないわよ。思い出したくもないわよ。私が若かったの。純粋な乙女だったのね」


「……」


 藤野は、取ってつけたような言い方に違和感を覚えた。


「何で急に黙るのよ。失礼ね!」


「いや、そう言うわけじゃない。ごめんね」


「ほら、そう言って謝るということは、否定してると言うことよ。でもね、あの頃は若かったの」


「違うよ、今も綺麗だなと思っているから」


「あら、藤野君。お世辞を言うようになったのね。私、酔っちゃおうかしら」


「そうだよ、酔って何もかも忘れると良いよ」


「ばかね、変なこと考えているでしょう」


「違うよ、そんな事考えていないよ」


「そんな事って、どんな事?」


「…うっ、ここ何時までだったかな?て思っただけだよ」


「お代わりして良い?」


「もちろんだよ!どんどん飲もう!」


 藤野は嬉しそうに言う。


 目の前に広がる夜景は、キラキラと華やかに輝いていた。夜景に魅せられた二人の心も、いつしか華やいでいた。


                        つづく

次回は5月10日朝10時に掲載します