Shopping Cart
Your Cart is Empty
Quantity:
Subtotal
Taxes
Shipping
Total
There was an error with PayPalClick here to try again
CelebrateThank you for your business!You should be receiving an order confirmation from Paypal shortly.Exit Shopping Cart

            人込み 5

 その店は伊勢丹新宿の並びにあるパスタ店だった。麗子も何度か訪れていた。そのせいもあってか嬉しくなった。


「僕はね、ここのボンゴレ(あさり)が大好きなんだ」


「あたしも同じにしようかしら」


 かなりニンニクがきつめである。麗子は知っている。無頓着なところは中学時代と一緒ねと思った。


 ディナーなんかに誘われたらどうしようかと思っていた。気楽で良いわとほっとした。


「人生は魔法のようだ」


 突然、藤野が真顔で言う。


「どうしたの?急に突飛なことを言うわね」


「実はね先月、16年ぶりに郷里に帰ったんだよ。友達は誰もいない。当然だよね。みんな東京か大阪へ就職だ」


「あなただってそうじゃない。地元にろくな就職先はないからね。それがどう関係あるの?」


「懐かしくて散歩がてらに街を歩き回っていたんだよ。道路も街並みも大きく変わっていた」


「当り前じゃない。同じだったら困るわよ。でも16年もなぜ帰らなかったの?」


「理由はないよ。いつの間にか16年経っていたんだよ。でね、歩いているうちに中学校の前に来たんだよ」


「昔のままでしょう。あそこだけは昔のまま変わっていないの」


「そうなんだよ。色々思い出してね。なんだか胸が熱くなったよ。川村のことなんか特にね」


「あら、どうして?」


「みんな好きだったからな。一番の美人だったからね」


「いまさら、お世辞言う必要はないわよ」


「思い出すと胸がきゅーっと痛くなってね。今どうしているんだろうと、なんだかせつなくなってね」


「ね、それどう言うこと。あたしのこと想ってくれてたと言うこと?」


「全てが川村のことだよ。学年の成績順も張り出されるから頑張った。1番になれば目立つから。でもいつも2番か3番。悲しかったな」


「話そらさないで、あたしのこともしかして想ってくれてたの」


「そうだよ。苦しいくらい好きだった」


                      つづく

次回は4月12日朝10時掲載します