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 「麗子さん?でしょう?」


「私の名前をどうしてご存知ですか?」


「やっぱりそうだ!川上中学ですよね」


「はい、そうですが……」


 麗子は腑に落ちない。相手は自分の名前を知っている。まして卒業した中学まで。もしかして興信所かと思った。


「同じ3年3組の藤野ですよ。わかりません?」


 麗子は藤野をしげしげと見た。


「あっ、ほんとだ!藤野君だ。そのどんぐり目!」


 周りが一斉に二人を見た。麗子の声がそれほど大きかった。


「しーっ、声が大きいよ」


 藤野は口に人差し指を当てて言う。


「今何してるの?」


「会社員だよ。川村は?」


「あたしは失業中。色々あってね」


「それは大変だな。仕事は何してたの」


「経理事務よ。20年務めてたのよ」


「何で辞めた?もしかして横領で首?」


「ひどいこと言うわね。自己退社」


「子供何人いるの?」


「えっ、どう言うこと。失礼ね。まだ独身です」


「まさか独身とはね。よく一人でいられたな」


「どういう意味よ」


「綺麗だからさ。男がほっておくわけないからさ」


「あら、お世辞がうまくなったわね。藤野君はお子さん何人いるの?」


「同じこと聞きやがる。僕は独身貴族だよ」


「そうね、無理かもね。そのどんぐり目では女性は怖がって近寄らないわね」


「そうなんだ?中学時代もそう思ってた?」


「冗談よ。逆よ。きりっとして素敵よ」


「嘘だろう?何だお世辞か」


「お世辞言うほどの人かしら」


「褒められたのかけなされたのかわからないな」


「会社何時に終わるの?」


「心配してくれてるの?それとも誘ってるの?」


「もうすぐ5時よ。中学時代、遅刻の常習者だったから大丈夫かなと思って」


「あっ、いけない。戻らなきゃ。川村、また会ってくれる?」」


「あたし忙しいのよ。どうしようかしら」


「あれ?失業中と言わなかった?」


「だから忙しいのよ。冗談よ。暇つぶしに会ってあげるわよ。いつ?」


「本当?うれしいな。明日で良い?」


「良いわよ。速攻ね。で、何時頃?それと場所は?」


「電話番号教えて、おいしい店があるから後で詳しく連絡する」


 二人は番号を教えあった。喫茶店を出ると、


「約束だよ。明日ね」


 藤野の言葉に、麗子は明るい気持ちになった。


                       つづく

次回は4月5日金曜日朝10時に掲載します