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         人込み 3

 そこは昔ながらの珈琲店。店に入いると珈琲の良い香りが漂っている。ほぼ満席だったが幸い座れた。


 店員が直ぐ来た。男は彼女に、


「モカで良いですか?」


 彼女が頷く、


「モカを二つ」


 店員は戻って行った。


「さっきはびっくりしました。追い抜いて来た人が、急に振り返って私を見るでしょう。驚きました」


「本当に失礼しました。すみませんでした」


「しかも美人です」


「美人だなんて、そんな……」


「会ったばかりです。お世辞の必要はありません。ところで、誰かお探しでしたか?」


「いえ、知り合いと間違えたのです」


「そうでしたか?私はひょっとして失礼をしてしまったのではないかと、心配になって戻ったのです」


「えっ、……」


「あっ、ごめんなさい。僕は健忘症ですから、誰だか見忘れてしまい、失礼をしたのではと思いまして」


「健忘症ですか、面白いことをおっしゃいますね」


「最近は多くなりまして、友人などは認知症だと言います。だから咄嗟に確認しておこうと思いました」


「知的な雰囲気の方ですから、とてもそうは思えません」


「知的?いえ、あほうです。何でも直ぐ忘れます」


 良い香りと一緒に珈琲が運ばれて来た。


「どうぞ!」


 男は珈琲を勧め、二人は飲み始めた。


「僕は藤野と言います。お名前お聞きしても良いですか?」


「川村と言います」


 藤野はあっと思った。そして川村の顔をじっと見た。


「どうかしましたか?」


 川村は不審げに聞く。

                        

                        つづく

次回は3月29日金曜日朝10時に掲載します