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         人込み 11

 麗子は心配になってきた。お金足りるかしら。ディナーのコースから始まり水割りやカクテル3、4杯づつ飲んだ。


 どこかで食事をしてから、ここに来ると思っていた。まさか、ここでディナーをするとは思ってなかった。


 麗子は落ち着かなくなった。今度は私がご馳走すると言った。でも、藤野君はディナーを予約するんだもの。


「どうかしたの?心配事?」


「どうして?」


「なんか考え事をしているようだから」


「ううん、時間の経つの早いなって思ってたの。もう10時半よ」


「明日休みだろう?あっ、ごめん!」


「良いのよ、気にしなくって。珈琲にして良いかしら」


「じゃ、僕もそうするよ」


「ねぇ、藤野君。お付き合いしている人いるんでしょう?」


「いないよ。僕なんかに、彼女なんて出来るはずがない」


「どうして?藤野君素敵よ。紳士って感じがする」


「ありがとう。川村はどうなの?」


「あたしはいないわよ。男の人に興味が無くなったの」


「ショックだったんだね。でも10年も経つんだろう。男はいくらでもいるんだよ。ここにだって」


「あら、藤野君も男だったの?それは知りませんでした」


「一応ね。川村が認めてくれないだけ」


「あたしは……」


 好きよと言いかけて止めた。同級生とは言え、再会して一週間にもならないのにと、自分でも変に思った。


「言いかけて止めるなよ。何て言おうとしたの?」


「あたしは認めてるわよと言いかけたの。でも認めてるって言い方変よね」


「認めてくれたんだ。ありがとう。それだけでうれしいよ」


 川村の心に変化が起きていた。藤野といると、なぜか気持ちが柔らかくなれる。そして、わくわくと楽しくなった。


「そろそろ11時だ改札まで送るよ」


 藤野は伝票を持って立ち上がった。


「それ、私の約束よ」


「馬鹿言うんじゃないよ。男に恥をかかせるの?」


 タクシーは新宿駅にすぐ着いた。二人は無言で改札まで歩いた。


「気を付けて帰ってね」


「今日は、いえ、今日もごちそうさま」


 麗子は手を差し出した。藤野はしっかり握りしめた。麗子は痛いほどだった。藤野は何か言いかけたが出てきた言葉は、


「おやすみなさい」


 麗子は少しがっかりして藤野を見た。


「おやすみなさい」


 麗子は電車の方へ歩いて行った。電車のドアの前で振り返った。藤野が気付いたらしく改札で手を振った。


                        つづく

次回は5月24日金曜日朝10時に掲載します