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 まさかと思いながら女は立ち止まった。すれ違った男は女と反対方向へ人波と一緒に通り過ぎて行く。


 新宿の地下道は夕方特に混む。人々は川の流れのように淀みなく一方向へ流れ行く。


 あの人だあの人に違いない。彼女は向き直るとその方向へ歩き出した。男は人波に見え隠れする。急ぎ足になった。


 人波は急ぎ足を嫌った。なかなか前に出られない。それでも人波は、相手が女と知ると無言で前に通した。


 やっとそばまで来た。間違っていたらと思うと声がかけられない。心躍らせながら一歩前に出て振り向いた。


 違った。人違いだった。その男は怪訝そうに彼女を見ながら人波と一緒に立ち去って行った。


 この3年で彼女は変わった。今年41歳になる。あの頃、彼女の周りは男が競い合うように寄って来た。


 その容姿は人目を引いた。色白で面長の顔に鈴を張ったような目。身長162㎝。長い黒髪が歩く度に首筋に揺れる。


 ひょっとしてと思い、心躍らしただけに落胆も大きかった。人波から一歩外れてそこに立ちすくんだ。


「失礼ですが、どこかでお会いしましたか?」


 さっき見間違えた男が、にっこり笑いながら声をかけて来た。男は引き返して来たのだ。


                        つづく

次回は3月15日金曜日朝10時に掲載します