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人待ちおでん屋台2

 「酒、冷でね」


 その声を聞いて女は振り向いた。予感はしていた。


「こんばんは、一昨日はありがとうございました」


「あ、貴女か。今晩は。おっ、やってるね」


 女の皿の中の大根を見て嬉しそうに言った。


「はい、この味が忘れなくて又来ました」


「女将、私も大根頼む。つくねとごぼう巻きもね」


 女将がコップに酒を注ぎ男に出す。男は片手で受け取るとそのまま飲み干した。


「うまい!腹に沁みる。湯上りにこの一杯が最高だ。もう一杯くれる」


「はい」


 女将は一升瓶を再び持ち、出されたコップにゆっくり注ぎ、


「お味はいかがですか?」


「うん、そういえば辛口だな。酒変えたの?」


「甘口は風呂上りには合わない、とおっしゃるお客様がいらっしゃいまして…切りが良いので今日から変えました」


「ひょっとすると、口開けだったかな?」


「そうです。お客様が最初です」


「あのう…お酒は甘口と辛口ってあるんですか?」


「そうか、君にはわからないよね。あるんだよ。大抵の酒は甘口だけどね。ちょっと試してみる?女将、この人に一杯出してくれる」


「私、飲めません。お酒弱いんです」


「まあ、良いじゃないか。味を見るだけだから」


 女将がコップに酒を注ぎ彼女に出した。


「いえ、困ります。私、弱いんです」


「せっかくだから、一口味見されたらいかがです?」


  女将がにっこり笑みを浮かべて言う。女は申し訳ないと思ったのか、グラスを手に一口口に含んだ。女はあれっと言う顔をした。


「甘いんですね」


 それを聞いて男と女将は怪訝な顔をした。


「辛口なんだけどな。もう一口飲んでみて」


 男の言葉に女は素直にもう一口口に含んだ。やっぱり甘いと女は思った。男はふと思った。確かに純然たる辛口ではない。辛口風である。


「私、甘いと感じるのですけど」


「良いんだよ。感じる通りだと思う。原料は米だからね。酒は初めて?」


「初めてです。ビールは飲んだことあります」


「そうなんだ。じゃ、お皿のごぼう巻き一口食べてから酒を飲んでみて」


 女は素直に男の言うとおりにした。


「どう?酒の味変わった?」


「何だか良いですね。大人になった気分です」


「君、幾つ?」


「あら、女性に歳を聞いては失礼よ」


「平気ですよ。26歳になります」


「そうなんだ。二十歳(はたち)そこそこかと思ってた。そーなんだ」


 そうなんだは男の口癖のようだ。


「私、お脳がからですから…」


「あら、面白いことを言うわね。だったら私の頭、からからと言うわね」


 女将が笑いながら口を挟む。そこへ囲い幕を広げて客が入って来た。30前後の男だ。女の横に立った。 

                          つづく

続き3回は11日金曜日朝10時に掲載します

18日朝10時に変更致します。申し訳ありません