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人待ちおでん屋台1

 いつからここにおでん屋が出来たのだろうか。垂れ幕で上半分が囲まれ中が見えない。 


 反対側に屋台主であろうか珍しくも中年の女が立っていた。銭湯の入り口横である。


 前に三人右横に一人、男ばかり満席である。そこへ若い女の客が垂れ幕を開けた。目の前の男が右へ詰めて、


「どうぞ、空いてますよ」


「ありがとうございます」


 一瞬戸惑ったようだが、その間に立った。


「いらっしゃい」


 女将が皿を出した。少し深皿になっている。


「何に致しましょう?」


 女はおでん鍋を一通り眺めると、


「さつま揚げと、はんぺんと、ごぼう巻き下さい」


 女将はたっぷりおつゆを入れて出した。女はこぼさぬように両手で受けた。


「からしはそこにあるから、どうぞ」


 屋台の左端に短冊が下がっている。おでん1つ100円。お酒、焼酎250円と書かれてあった。


 女は添えられた割り箸を割り、片手で持ってさつま揚げを一口食べた。


「おいしい!」


 思わず口に出た。右隣の男が、


「うまいんだよ。しかも安い。次は大根食べてご覧、うまいぞー」


 女は口に入っているから返事が出来ない。頷いた。年の頃25,6。美人ではないが愛嬌の良い顔をしている。 


「では、大根下さい。ここに入れて下さい」


「女将さん、それおれのおごり」


「いえ、自分で払います」


「そう固いこと言わないの。袖触れ合うも何かの縁と言うだろう」


 男は30半ばのサラリーマン風である。白のとっくりセーターにグリーンのカーディガン、グレーのスラックス。酒をゆっくりと飲んでいる。


 女将は別皿に入れて出した。男はそれを見て、


「たまごを足して。それもおごり。旨いんだから」


「ありがとうございます。では、遠慮なくいただきます」


「酒はどう?」


「いえ、お酒は飲めないのです」


「そうか、それは残念だな。女将、お勘定」


 男はあっさり帰って行った。女は二日後、又訪れた。客は誰もいなかった。


「いらっしゃい」


「こんばんは、大根とたまごとさつま揚げ下さい」


 女将は皿に入れながら、


「寒いわね、何だか雪が降りそうね」


「寒いですね。ここは風呂の終わりまでやられるんですか?」


「ううん、11時までね。後、2時間頑張らなくっちゃ」


「大変ですね。私にはありがたいけど…いらっしゃい」


 中年の女が鍋を手に入って来た。


「さつま揚げとはんぺんにごぼう巻き。それに大根とたまごを全て2つづつ入れて。おつゆたっぷり入れてね」


「いつもありがとうございます」


 女将は鍋に注文のおでんを入れ、おつゆをたっぷり注いだ。最後にさつま揚げを一枚入れた。


「あら、いつもありがとう」


 中年の女に入れ替わり、男の客が入って来た。


「熱燗にして一杯くれる。それに大根とごぼう巻き2本」


 女は二皿目にはんぺんとごぼう巻きを追加した。


「いらっしゃい」


 二日前のあの男が入って来た。

                           つづく

次回は1月28日金曜日朝10時に掲載します