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人待ちおでん屋台 10.

「君には色々迷惑をかけたが、会社は持ち直して今結構うまくいっている」


「良かったわね。借金はどうなったの?」


「山田がひょっこり訪ねて来たんだよ。そして、実家の家屋敷を売って清算してくれたんだ」


「・・・・・」


「懲りたよ。もう二度と保証人にはならない。君と別れることになってしまって・・・」


「・・・・・」


「酷いことを言ってしまったと、今でも後悔している。そうでも言わないと君を巻き添えにしてしまう。あれは本心じゃないんだ」


「・・・・・」


「私、死のうと思ったの」


「ごめん、本当にごめん。でも、そう言うしかなかったんだ。5千万の借金を抱えてしまったんだ…。でも2年後、山田が出て来て解決した」


「良かったわね」


「すぐに君を捜したんだ。興信所も頼んだがどうしても見つからない。

十日に一度は役場に行く、住民票を調べに。それから3年になる。


「・・・・・」


「戻ってきて欲しい。お願いだ。本心じゃなかったんだ。ああでも言わないと君は別れてくれなかった。本当にごめん。戻って欲しい」


 女将は両手で顔を覆って俯いた。声を押し殺して泣いていた。肩と背中が同時に震えていた。


「本当に酷いことを言ったと、自分が信じられない。でも辛かった。本当に辛かった。心と言葉は裏腹だつた。ごめん…ごめん………」


 男の目から涙がこぼれて来た。もう言葉にならなかった。二人は俯いたまま暫くの時間が流れた。顔を上げた男は、


「結子と逢えた。不思議なことだ。どんなに探したことか。それが偶然に。しかもおでん屋台だ」


 結子は顔を上げた。


「不思議だ。僕らが知り合ったのはおでん屋台だ…。屋台は思い出すのが辛くて避けていたんだ。それがさっきはふらっと入ってしまった」


「あたし、夢でも見てるかと思ったの。ぼーっとして何が何だか分からなくなったの。そしたら、元気だった?って言われてはっとしたの」


「それは僕のことだ。夢なら夢でも良いと。嬉しかった。しかも、元気よって答えてくれた」


「5年も経つのよ。どうして知らせてくれなかったの?」


「ずっと探してた」


「嘘よ。あたし待ってたの。きっと本気で言ったんじゃない。だから、必ず迎えに来てくれる。そう思って近くにアパートを借りたの」


「確かにあの頃は逃げ回っていた。ホームレスをしていた」


「本当に?ほかに方法はなかったの?」


「勤めれば必ず見つかる。アルバイトもそうだ。ホームレスしかなかった。約2年やった。これが運と言うものだ」


「運ってどう言う意味?」


「そうだ。2年近く経ったある日、新入りが挨拶に来た。それが山田だったんだ。いきなり逃げようとした。必死で捕まえた。山田は僕の姿を見て泣いた。酷い恰好をしていたからね。その日のうちに山田の実家、長野に同行させられた」


「解決すると、やっと表立って動けるようになった。そうなると頭の中は結子ことだ。探した。興信所はもちろん、やれることは何でもやった。どうしても探し出せなかった。申し訳なくて辛くて、心が破裂しそうだった」


「・・・・・」


 結子は身じろぎもせず男(稲垣)を見つめた。目にはいっぱい涙を溜めていた。


「生きていて良かった。結子申し訳ない。言葉では何を言っても足りない。これから一生償いをさせてもらう。お願いだ。帰って欲しい」


 結子は肩を震わせ声を押さえて泣き始めた。稲垣はその肩をしっかり押さえた。稲垣も肩を震わせ泣いていた。

                           つづく

続き11回は11月4日金曜日朝10時に掲載します