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     5.初めての夜

 「良太さんが帰ってしまったらどうしょうって心配だったの。待っててくれてありがとう」


「待ってるに決まってるだろう。他に行くところ無いんだから」


「えっ!本当にしていいの?あたし、本気にするわよ」


「おいらこそ、本気にするぞ」


「あたし、本気よ。良太さんが好きなの」


「おいらも、おみつさんが好きなんだ。この一年間、毎日毎日おみつさんのことを思わない日はなかった」


「だから早く良い大工になって、おみつさんに会いに行こうと頑張ったんだ」


「うれしい!」


 おみつは良太の布団の中に手を差し伸べて来た。良太も待っていたようにおみつの手を握った。


 良太の胸はドキドキと早鐘のように鳴っている。しかし、どうしていいのかわからない。良太はまだ女性を知らなかった。おみつは良太の手を両手でしっかり握りしめた。


「足が冷たいの。そばに行っていい?」


「いいよ」


 手を伝うようにおみつが良太の布団に入って来た。同時にふわっと若草のような甘い匂いがした。良太はその匂いに体が熱くなってきた。


「ね、足入れてもいい?まだ冷たいの」


 良太はおみつ向きに横になり、入れて来たおみつの足を両足に挟んだ。自然おみつを抱く形になった。おみつも両手を胸に小さくなった。


 良太は困った。体の一部が突っ張ってしまった。おみつにわからないように、当たらないようにするのに必死だった。知ってか知らずか、おみつはさらに身体を寄せて来た。


 良太は恥ずかしかった。当たらないように腰を後ろに引いた。おみつに知られないようにするにはどうすれば良いか、頭はそのことでいっぱいだった。


 良太はおくてだった。だから女性の口を吸ったことも無ければ、知るすべもなかった。


「温かい。うれしい!」


おみつは身体をさらに摺り寄せて来る。


良太は自然におみつを抱きかかえるような姿勢になった。


「眠くなっちゃつた。眠っても良い?」


おみつは、甘えるような甘ったるい声で言う。


「疲れたんだろう。遅くまで働いたからね。寝なさい。ゆっくり寝ると良い」


 良太はおみつの頭をそっと撫でた。おみつがせつない程好きだった。しかし、その気持ちをどうしていいかわからなかった。


 良太はなかなか寝付けなかった。おみつを見ると、すやすやと小さな寝息を立てて眠っている。たまらなくなってそっと抱きしめた。


 おみつの寝息が止まった。


 良太はおみつに気付かれてしまったかと、ドキドキした。そして、自分の体をじっと静止させた。


 暫くして、おみつの寝息が再び聞こえて来て安心した。その寝息を聞いているうちに眠ってしまった。


 目が覚めるとお味噌汁の良い匂いがしてきた。半身を起こすと、


「良く寝てたわね。疲れてたのね」


 おみつに逆に言われてしまった。そして、手拭いを持って来た。


「顔を洗って来ると良いわ。朝ごはんにしましょう」


 良太は井戸端で顔を洗いながら、いつの間に寝たのか考えたが、全然思い出せなかった。


 朝日が笑うように、燦々と良太を照らしていた。


 豆腐の味噌汁に目刺しとたくあん。質素だがおいしい朝ごはんだった。


「ねぇ、あたし今日から三日まで休みよ。どうする?」


「どうするったって、どうする?」


「あたしが聞いてるのよ。ずっと泊まってくれると言ったわよね」


「ああ、そのつもりだよ」


「今日は大晦日よ。いっぱいご馳走作るからね」


「そうか!大晦日か?おみつさん、永代寺に行こう。縁店見物しようよ」


 おみつの顔がふっと曇ったのを、良太は気付かなかった。


                                   つづく

次回は1月24日(火曜日)

※毎週火曜日と変更します。