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         マスク美人 9.

「ごめんなさい。何か気に障ることしてしまいましたか?」


「いいえ、何でもありません。この曲を習っていた時のことを思い出していたのです」


「何かつらいことがあったんだ」


「そうじゃないの。母も先生も辞めないで回数を減らすことにしたらと言いました」


「どうしてそうしなかったの?」


「この曲を聞くと、これまでの自分の悪かったことが思い出されて、堪らなくなったのです」


「当時、中学生だよね」


「そう、3年生でした。この時も先生からごめんなさいねと謝られたの。指導の厳しさと思われたの。全然違うの」


「・・・・・・」


「先生はすごく優しかったの。今思い出しても申し訳なくて。先生は辞める原因が自分にあったと母にも謝ってました」


「そう言う勘違いってよくあるんだよね。今だってそうだよ。悔しいけど、恋人の事思い出してるのだろうって思ってた」


「私、恋人なんかいません」


 森山は怒ったような口ぶりで言う。


「えっ、本当に?」


「いたらここにお邪魔なんかしません。でも山本さんはいらっしゃるでしょう?当然ですもの。素敵な人だから」


「・・・・・・」


 山本は、素敵な人と言われて天にも昇るような気持になった。嬉しくて返答が出来ない。


「いらっしゃるのでしょう?」


 森山は重ねて聞いて来た。


「いません。いるわけないでしょう」


「どうしてですか?」


「どうしてって言われても・・・。じゃ、僕とお付き合いしてもらえますか?」


「はい!よろこんで!あら、何か屋さんみたい。フフフ」


「嬉しいな!よし、乾杯しよう」


 山本はを立ち上がると、冷蔵庫からビールの缶とグラス2つを持って来た。


「私、お酒飲めないんです」


「ビールも駄目ですか?」


「少しでしたら」


 山本はグラスに注ぎ始めた。


「あっ、それで良いです」


「駄目ですよ。乾杯は少ししか飲まなくても完全に入れるものです。だから完杯とも言うんです」


「そうですか、わかりました」


 森山はそれでも嬉しそうに言った。ふと、酔っても良いわと思った。


「じゃ、二人のために乾杯!」


 苦い、森山は途中で止めようとした。山本が飲み干してにっこり笑って見ている。止めるわけにわけに行かず飲み干した。山本が拍手した。森山も拍手した。


「森山さん、いけるじゃないですか?良い飲みっぷりですよ」


 確かに飲みにくいことはなかった。少し苦いだけ。喉がすっとして爽やか。山本はビールを出して来た。


「どうぞ!飲めないなんてうそばっかり」


 注がれたビールを口にした。飲んでも平気だわ。変ね私、飲めるんだわ。その時、ぽわーっと顔が温かくなってきた

                   つづく

次回は11月6日朝10時に掲載します