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  マスク美人 15.最終回

 入口の呼び鈴が鳴った。美咲の顔がぱっと明るくなった。急いで入口へ行った。その足音を聞いて、


「僕だよ」


 誠一の声に美咲は嬉しそうに弾む声で、


「お帰りなさい!」


「ごめんね。遅くなったね」


「ううん、大丈夫。お腹空いたでしょう?お鍋の用意してあるの」


「えっ、本当?嬉しいな!何の鍋?」


「ふふ、すき焼きでーす!すぐ始めます」


「すごい!元気ついちゃうよ!」


 嬉しそうにおどけて言う。美咲は遅くなったことについて何にも聞いて来なかった。誠一も言わなかった。


 その夜、合体があった。美咲は心配だったが痛みは殆どなく、一体となった喜びと幸せに溢れていた。


 二人は激しい合体の後、溶けたように眠っていた。カーテンの隙間から朝日が射して来た。美咲は慌てて起きた。


 朝食を済ませ、珈琲を飲み始めた。誠一が何気ない口調で、


「これから婚姻届けを出しに行くよ」


「えっ、本当ですか?」


「そうだよ。その前にコンビニに行って戸籍謄本を取り寄せよう。美咲の町の謄本も取れるよ。調べてある」


「そうなんですか!便利ですね」


「今日の予定はびっしりだからね。その足で区役所に行って婚姻届けを出す。あっ、印鑑持ってる?」


「ええ、いつもバックに入れてあります」


「よし、それで完璧だ!その後、銀座に行こうね。行きたいところがあるんだ」


「銀座?私、1年以上行ってないわ。嬉しい!どこに連れて行ってくれるんですか?」


「教えなーい!」


「いじわる・・・。ねえ、せめてヒント教えて下さい」


「ヒントね。そうだね・・・。それは、昨日遅く帰って来た理由だよ」


「昨日は今日の休みを取るための調整だったのでしょう?すみませんでした。でも、どう関係あるんですか?」


「あのね、僕が問題出してるんだから、答えを聞いてはいけないよ。行ってのお楽しみにしておこうね」


 美咲は照れ笑いをした。二人はコンビニを経由して区役所に行き婚姻届けを出した。あっけないほど簡単だった。


「これで僕達、国が認めた夫婦だよ。さ、銀座へ行こう!」


「はい!」


 打てば響くかのように美咲はにっこり笑って身体を寄せた。区役所を出ると嬉しそうに自分から腕を組んで来た。


 誠一は照れくさそうだったが外さなかった。そんな美咲が可愛くてそっと顔を見た。美咲はにっこり笑って見返した。


 決して美人とは言えないが、そのにこやかな顔は見ただけで気持ちがほっとする。優しくて明るさに満ちている。


 新宿に出て、JRから地下鉄に乗り換えると銀座まで一直線。降りた駅は老舗デパート駅だった。


 新館の2階へ入って行った。そこは全てジュエリーコーナー。昨日と同じ売り場へ行くと係がすぐに寄って来た。


 美咲は何だか胸がドキドキした。


「おめでとうございます」


 係は二人を見るとそう挨拶した。


「昨日の指輪お願いします」


 誠一が嬉しそうに言う。係は奥からうやうやしく指輪を出して来た。誠一はその指輪を美咲に照れながら渡した。


「つけてご覧」


 美咲の薬指にすっと入った。


「どう?サイズは?」


「はい、ピッタリです」


 誠一は係に向かって、


「サイズは合いましたね。よろしくお願いします」


「本当にサイズはピッタリですね。そのままでお直しする必要ありません。何よりも奥様に本当に良くお似合いです」


 奥様と聞いて美咲はこそばゆいような嬉しい気持ちになり誠一を見た。誠一も嬉しそうに微笑んでいた。


 誠一は昨夜、結婚指輪をプレゼントするためにここに来た。結婚指輪と婚約指輪があるのを初めて知った。


 指のサイズのことは考えもしかった。大きい場合の対処はそう難しくないが小さい場合は難しい。長く身に付ける物だ。妥協はしたくなかった。


 又、婚約ではないから婚約指輪ではない。結婚指輪になると言うがペアでつける結婚指輪は要らないと誠一は断った。


 男が指輪などするものかと思ったからである。誠一の結婚指輪は、一般的な概念から外れていた。


 誠一は結婚の記念に、指輪を美咲にプレゼントしたかった。これは、美咲への愛の喜びを込めた結婚指輪である。


 エレベーターに乗った。これから11階の老舗会館でディナーをする。美咲は幸せ過ぎてずっと涙を堪えていた。


 そっと誠一の胸に顔を伏せて、声を押さえて泣き出した。周りの客は気付いていたが知らぬふりをしていた。


                      終わり

次回は新作です、12月18日金曜日朝10時に掲載します