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-*- マスク美人 11.

 山本は思いがけない言葉に戸惑ってしまった。改めて言われるとどうして良いかわからない。森山を見た。

 

 森山は座り直すと目を閉じた。山本はその両肩をそっと引き寄せ唇を合わせて行った。


 実は山本もキスをよく知らなかった。37歳にもなってと思うが、友人に聞けば笑われるに決まっている。


 相手もいないのに、本でわざわざ調べる気もない。女性経験はないわけではないが、それはビジネスだった。


 潔癖症の山本は、キスは絶対にしなかった。小学生の頃友人の女の子が遊びに来た時、蛇口に口を付けて飲んだ。


 咄嗟に汚いと思い、その子に帰れと帰してしまった。今思い出すと申し訳なくて、今でも胸が痛む。


 学校ではみんな、蛇口に口を付けて飲んでいた。コップ等は誰も学校に持参して来ない。当たり前の事だった。


 森山が愛しくて堪らない。柔らかい唇の感触が口を押し付けるだけでどうして良いかわからない。


 森山は嬉しかった。でもどうして良いのかわからない。さっきは息を止めていたので苦しくなって顔を離した。


 今はそっと鼻から息をしている。女性はどうしていれば良いのかしら?自分から動けばはしたないと思われる。


 その時、さっきのように唇を上下同時に吸われた。今度は息をしているから苦しくない。初めての感触だった。


 同時に両手で抱きしめられた。胸が圧泊されて苦しいほどだった。森山はいつの間にか冷静に考えていた。


 山本の息遣いが荒くなっていた。片手で胸を触って来た。森山はじっとしていた。そのまま横にされた。


 突然、セーターを胸の上まで捲し上げられ、ブラジャーの上から触って来た。すぐにそれも捲り上げられた。


 恥ずかしい。胸が小さいからがっかりされたかも。恥ずかしくて目が開けられない。でも良いの好きだから。


 山本さんが好き。もう1回してと言った時からこうなるかもと思っていたの。突然、身体がぴくっとした。


 乳首を吸われている。初めての感覚だった。もう恥ずかしくないわ。あなたの好きにして。


 真っ白な綺麗な乳房だった。ミロのビーナスのようだった。ピンクの乳首。思わず吸い付いてしまった。


 部屋の明かりはそのままである。森山は恥ずかしそうに両手で顔を覆っている。


「お願い、明かりを消して」


「ごめん」


 山本は小さく言うと、立ち上がりスイッチを切って来た。キッチンの明かりまで消したので窓の薄明かりのみである。


 森山は抱きしめられた。山本の息遣いが聞こえる。それを隠すかのように口づけをして来た。自分も押し付けた。


 スカートの中に片手が入って来た。ショーツの上からそっと摩るように動かす。


 何だかくすぐったいので身体を少しよじった。同時に気持ちがせつなくなってきた。このままで良いのかしら。


 複雑な気持ちだった。こんなに簡単に許して良いのかしら。そんな女に見られたらどうしょう。


 その手を押さえて思い切って言った。


「私、初めてなんです」


 山本の動きが止まった。少し沈黙があって、


「本当に?」


「そうです。おかしいでしょう」


 山本は急に起き上がった。そこに座ったのがわかる。


「森山さん、君が好きだ。心から愛している。結婚して欲しい」


 森山は捲られたセーターをもとに戻すと、そこに座り直した。


「私みたいな売れ残りで良いんですか?」


「売れ残りだなんてとんでもない。僕は幸運を射止めたんだ。結婚して下さい」


「本当に良いんですか?私みたいな女で」


「何を言う。世の中で一番の女性です。どこにもいません。結婚して下さい。お願いします」


                      つづく

次回は11月20日金曜日朝10時に掲載します