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  25、つけられる

 一平はつけられていた。まさかが的中した。


 曲がり角の直前、日頃の習慣が後ろに気配を察した。剣の修行で一定以上の心身を磨いた者は、自然と身につく気配の気付きである。


 どこからつけて来たのだろう。街中を抜けて、長屋並びに入ってから気が付くとは情けない。


 振り返ることはしない。気配を消してつけていたとすると只者ではない。一定の距離を保っているのも余程の注意深さだ。


 今、一平をつける者はいないはずだ。波江と敬一郎にはもう必要なかった。一平は興味を持った。


 又、このままにして帰るわけにもいかない。帰路には曲がる必要のない角を曲がった。三間ほど歩いて振り返り待った。


 程なく、角を大回りに曲がりながら男が歩いて来た。


 一平の待ち伏せを知ると、顔を隠すように踵を返し、一目散に来た道を逃げて行った。


 武村であった。武村は自分の名を聞いて行った商人がいると聞きつけ、たばこ屋を見張っていたのである。用心深い男でたばこ屋に直接聞くことはしなかった。


 一平は確信した。黒い裏がある。


 追うことはしなかったが、迷路のようにぐるりと遠回りをして長屋

に帰った。


 「お帰りなさい!」


 きぬの明るい声で我に返った。きぬを悲しませるようなことになってはいけない。明るい顔に直り、


「ただいま!変わったことはなかったかな?」


「いえ、どうかなさったのですか?」


いつも聞いて来たことのない言葉だ。


「なければ良いのだ」


 いつもの場所に座り、立ち動くきぬを見ていると、きぬが愛おしくてならない。命を懸けてもを守らなければと改めて思った。


「今まで志摩さんがいらしていたのです。お団子をお土産にいただきました」


「ほう、団子とは珍しいね。しばらく食べてなかったね」


「浅草まで行って来たそうです。私も行ってみたい。一度も行ったことがないのです」


「そうか、浅草に行ったことがないのか?」


「一平さんはおありですか?」


「いや、ない」


「じゃ、同じではありませんか」


「うん、そうだった。江戸に来て四年にもなるのに私も浅草には行ったことがなかった。


「どうぞ、お茶が入りました」


 いつもながら、きぬはすることが手早い。団子と一緒に目の前に並ぶ。


「お団子どうぞ!」


「どれどれ!うまそうだ」


 一平は早速口に入れる。


「うまいね!きぬも食べなさい」


「はい!いただきます」


 二人仲良くにこにこしながら、団子をほおばっている。


「きぬ、明日浅草に行こう。浅草寺にも行ってみよう」


「本当にですか?うれしい!」


 きぬは子供のように身体ごと嬉しそうである。


一平はその様子を見て嬉しそうに、


「明日は浅草だ!」


 きぬはにっこり笑いながら、


「はい!」


                           つづく

次回26回は1月16日朝10時に掲載します