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   23、剣仲間

 波江と敬一郎は隠された事実があることを確信した。同時に悪い予感をも感じていた。


「姉上、理由は知らぬ方が良いとはどう言うことでしょうか?」


「私もそれを考えていたのです。何かを隠していることは間違いないでしょう」


「松永様が慌てるように帰って行ったのは、余程の事だと思います」


「と言って、私達が藩に帰って調べるわけにはいきません」


「祖父(じい)に知らせて、調べてもらいましょうか?」


「いいえ、それはなりません。祖父に万一のことがあってはなりません」


「姉上、それではどうにもなりません」


「明日、新見様にご相談いたしましょう」


 次の日、朝五つ半(午前九時)。


 一平ときぬは向い合わせに賃粉切りをしていた。


突然の、朝早い二人の訪問に驚いた。


「戸を閉めてお上がりなさい」


 波江は引き戸を閉めると、


「朝早くに申し訳ありません。ここで結構です」


 二人の顔を見て只事でないと知った一平は、賃粉切り一式を部屋の隅に押しやり、


「遠慮はいらぬ、上がりなさい」


「どうぞお上がり下さい」


 きぬは、早速お茶の用意をしながら二人に勧める。茶湯は飲んだばかりでまだ熱かった。


「ぬるめのお茶ですが、どうぞ」


 手早く出されたお茶を、敬一郎は余程気が急(せ)いていたのだろう。ふうとため息まじりに飲んだ。波江はお茶を口にせず、


「昨日、松永様が訪ねて参りました。ご相談がございます」


「ま、お茶を飲みなさい。話はそれからだ」


 一平には波江の急いている様子を見て取った。


 お茶を飲んだ波江はいくぶん落ち着いたようだ。一平を真っ直ぐに見て、


「新見様の言われた通り、松永様にお酒をお勧めしました。そして、仲の良かった父と新見様が、なぜこのようなことになったのかいまだに信じられませんと言うと、


『理由は知らぬ方が良い』


とおっしゃいました」


「何!それはまことか?」


 一平は驚いて言う。


「はい、ご自分も失言なされたと気付かれたようで、その後すぐにお帰りになりました」


「私が藩を出た後、江戸詰めになった者のはわかるかな?」


「江戸へ出てからはわかりませんが、その前ですと二人います。新見様が藩を出られた一カ月後です。なぜこんな時期にと祖父が呟いていたことを覚えております。江戸詰めになるのは毎年四月です。十月は異例でした」


「どうして、祖父殿はご存じだったのかな?」


「お二人ともご挨拶に来られました」


「その二人の名はわかるかな?」


「松野様と武村様です」


「松野殿も武村殿も良く知っている。剣仲間だ。私の仲間が二人とは、何か作為を感じる。今も江戸詰めかな?」


「わかりません。江戸屋敷で聞いて参りましょうか?」


「いや、波江殿はまずい。敬一郎殿もだ」


「祖父に手紙を出して聞いてみましょうか?」


「いや、何か起きるかも知れぬ。巻き込んではならない」


「松永様に聞いてみましょうか?」


 敬一郎が言う。


「いや、松永には聞いてはならぬ。敬一郎殿、松永とは又一緒に飲むと良い。何か面白いことが聞けるかも知れぬ」


 二人が帰った後、一平はたばこ屋のおやじを訪ねた。


「一平様。お安い御用です。その藩にはたばこを納めております。さりげなく聞いてまいりましょう」


「いつ頃になるかな?」


「お急ぎですか?」


「出来れば早い方が良い」


「毎月10日に伺っております。五日後になりますがよろしいですか?」


「すまん、親父よろしく頼む」


 そして、五日後の夕七つ(16時)


 一平はたばこ屋の親父を訪ねた。


                                つづく

次回24回は1月2日火曜日朝10時に掲載します