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       どこかで見た人

 こんな時に限ってどのレジも並んでいる。一番少ないレジに並ぶ。前に三人並んでいる。後十分しか無い。駅前とは言え、駅まで二分はかかる。


 会社には直行により、午後出社と届けてある。実は深酒で朝寝坊。


 シャープペンの替え芯Bを切らし、スーパーに寄った。替え芯Bは駅の売店には無い。


 池袋についてからでも良いのだが、時間がもったいない。乗車時間は一時間もある。昼間は座れるので車内で書類整理をするつもりだ。後で消せるのでシャープペンを使う。


「お先にどうぞ!」


 にっこり笑って言う。どこかで見た人だ。


「良いですか?すみません!」


 助かった。これで間に合う。男は簡単にお礼を言って駅へ向かった。綺麗な人だ。誰だったかな?思い出せない。


 次の朝、ゴミ出しに行くと彼女がいた。


『あっ、お隣さんだ!』 男はやっと思い出した。


「おはようございます。昨日はありがとうございました」


「おはようございます。お急ぎのようでしたが、間に合いましたか?」


「はい、おかげさまで」


 彼女は半年前、隣に越して来た。男は二階奥。彼女はその隣。何度か顔は合わせたが挨拶のみである。


 昨日は眼鏡をかけていなかった。綺麗な人だと初めて思った。歳は少し上かなと思う。


 黒いビロードのような大人の女性だ。男は今、四十歳独身である。今日は土曜日で休日だ。急いでごみを置くと、後からついて行った。気付いていたのか、部屋の前で、


「どうも」


 と軽く会釈して、部屋に入って行く。


「どうもありがとうございました」


 男はドアに向かって、再度礼を言った。


 心は浮き浮きと、何だか嬉しくなった。男の心に、淡い心が芽生えたようだ。


                                 つづく