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    あなたは恋を知らない 5

 翌日もその書店へ行った。音楽書籍コーナーでいつもの如く立ち読みをした。次の日もその次の日も。


 書店へ行くのがわくわくする。しかし、一週間も会えないとわくわくが寂しさに変わった。


 帰ると必ずアニバーサリーを聞いた。聞いていると彼女の顔が浮かぶ。そしてせつなくなった。


 この気持ちは何だろう。中学時代の初恋。片想いした彼女を思い出した。あの時と同じ気持ちだ。

 

 三十数年間忘れていた気持ちだ。ひょっとして恋をしているのか。そんな馬鹿な!一度会っただけだ。


 今日で十日になる。彼女は来ない。ふと思い出した。月刊誌を毎月買うことを。


 書籍案内コーナーで発売日を聞いた。毎月20日で大分先である。それまで行くのを止めようと思った。


 そう思ったが、もしやと思い次の日もその次の日も書店に行った。


「しばらくでした。お元気でしたか?先日はごちそうさまでした」


 振り返ると彼女がにっこり笑って挨拶をする。


「どうも、しばらくでした。お元気でしたか?」


 田村はどきりとしながらも、平静に挨拶を交わした。


「私、今日は何だか会えるような気がしていました」


 二人は小声で話している。それは書店でのマナーだ。小声だけに話がもどかしい。もちろん長話は出来ない。


「どうでしょう?お話したいことがあるのですが、例の珈琲店に行きませんか?」


「少しのお時間でしたら・・・」


「はい、わかりました」


「でも良いんですか?お邪魔ではないですか?」


「また御冗談を。夢中ではありませんよ」


 二人は珈琲店へ向かった。満席だった。


「この上のレストランへ行きましょうか?」


「すみません。実はこれから予定があります。又の機会にしていただけませんか?」


「そうですか、残念ですね。ご連絡したいのですがお電話教えていただけませんか?」


「はい、わかりました」


 彼女はメモ用紙に番号を記入して渡してくれた。


「ありがとう。これ僕の名刺です。個人番号も書いてあります」


 彼女は受け取ると帰って行った。


                       つづく

次回は7月13日金曜日朝10時に掲載します