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   あなたは恋を知らない 15

 時刻はすでに12時を回った。後30分もすれば山手線も田村の乗る私鉄も終電になる。


 時計をチラ見する田村を見て、


「どうしたのですか?時間が気になります?」


 麗子が悪戯っぽく言う。


「いや、終電大丈夫かなと思って……」


「誰かお待ちですか?」


「僕は誰もいません。香山さんの事です」


「私のこと心配してくれるんですか?私、お子様ではありませんのよ」


 田村は心の中でタクシーで送る事に決めた。そして、

「Forever love 歌います」


 突然言った。心にやましい事を考えていた。その迷いが吹っ切れたからである。


「わー!聞きたい!入れますね」


 麗子は嬉しそうに言う。


 田村はメロディすら良くわかっていないのに無謀にも歌い始めた。


 それは歌うのではなかった。メロディに合わせて朗読を始めた。


 歌詞が内面の表情を見せる。カラオケのメロディに乗せ、詞が心に染みるように入って来た。

 YOSHIKIの歌詞の素晴らしさだ。幾多の歌詞の中で奇跡と言って良いくらい朗読に生きる。


歌は一方的に感動させるが、朗読は聞き手に思考の時間を取りながら流れて行く。


『私、田村さん好きだ!』


 麗子は朗読を聞きながら心の中で小さく言った。泣きたい気持ちになった。せつなさで身を切られるようだ。


 朗読の後二人は沈黙した。もう歌う気は無くなっていた。


麗子は田村の言葉を待っていた。


 田村は麗子の無言を不評と思った。もう歌える曲は無い。一緒にいたかったが口を出た言葉は、


「送ります」


 麗子は頷いた。


 田村はタクシーを拾うと駒込と指示した。麗子は小さな声で、


「帰りたくない」


 と言った。


 田村には聞こえなかった。駅から先は麗子の指示で走った。車はマンションの前に止まった。


「田村さんありがとう。お休みなさい!」


 タクシーは走り出した。


 田村は車の中で小さく呟いた。


「身の程を知ると言う事だな」


 麗子は部屋に入ると呟いた。


「あなたは恋を知らない」


 そんな二人も半年後結婚した。       


                       終わり

次回は9月21日金曜日朝10時新作を掲載します