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   あなたは恋を知らない 14

 何てばかなことをしたのだ。これで終わりだ。田村は自分が信じられなかった。黙っているのがいたたまれず、


「何か飲み物お代わりいかがですか?」


「いえ、まだありますから」


「ビール少し飲みませんか?」


「少しでしたら」


 田村は自分が飲みたかった。飲まずにはいられなかった。ビールを2本頼んだ。


 麗子は何事も無かったように会話してくれた。田村はほっとした。そして、麗子の大人の対応が嬉しかった。


 曲が入ってないときの自動CMがありがたかった。無言の空間を埋めてくれた。


「香山さん。シャンソンはお好きですか?」


「好きですよ。いつも聞いています」


「僕は愛の讃歌が大好きなんです。聞かせて頂けませんか?僕には難しくて歌えないのです」


「私も大好きです。でも大丈夫かしら?」


「お願いします!歌って下さい」


 麗子は静かに歌い始めた。なんて素敵な愛の讃歌だろう。岩谷時子の歌詞に心が震えた。田村はせつなくなった。


 麗子はいつもの歌い方と違っていた。歌いながら歌詞が自然に自分の心に溶けた。しっとりと心が濡れて行った。


「素晴らしい!」


 田村は力いっぱい拍手した。こんなに感動した愛の讃歌は初めてだった。心はせつなさで身を切るようだった。


 許されるならそばに行って抱きしめたいと思ったほどだ。


「田村さん、今度は歌って下さい」


 田村は返事をしたが歌える曲が無い、歌える曲は宴会用に練習した3曲しかなかった。


 残されたのは『星に願いを』だけだった。英語の歌詞だが田村の大好きな曲である。唯一歌詞を暗記していた。


 歌い始めた。不思議なことに音程の狂いが目立たない。音符一つに単語が乗る。単語にメロディが付く日本語とは大きな違いだ。


 麗子はとつとつと歌うような『星に願いを』に感動した。なぜか、田村が自分の為に歌ってくれたように思えた。


 麗子の拍手に照れくさそうに田村は座った。ふと時計を見ると23時少し前。楽しい時間は時を忘れる。


「香山さん何時まで良いですか?」


「何時でも」


 田村は耳を疑った。


「何時でも良いのですか?」


「はい大丈夫です」


 麗子は楽しそうに言う。


「もっと歌いましょう」


                      つづく

次回最終回は9月14日金曜日朝10時に掲載します