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     あなたは恋を知らない 11

 今日は週末の金曜日。田村には今日に至る2日間は長かった。時計の針がじれったくて指でぐるぐる回したくなった。


 朝の5時半から起き出してご機嫌でいた。ベートーベンの交響曲7番を繰り返し部屋中に流していた。


 学生時代からの習慣で、大事な日は心の高揚のために聴く事にしていた。


 田村は間違いなく恋をしていた。しかし、好きになった女性のために聴く曲ではない。


 恋を知らない武骨な男だった。婚期が遅れたのは無理もないことである。


 その男が恋をした。今日はおろし立てのスーツを決めこんだ。合わすネクタイがいつまでも決まらない。


 麗子は朝からそわそわしていた。何を着て行こうかしら、どれを着てもどれを合わせてもしっくりこない。


 最近はおしゃれよりも節約にいそしんでいた。貯金は大分増えた。将来を考えていた。


 結婚の文字が薄れていたのかも知れない。着衣は出勤間際になってやっと決まった。それでも迷っていた。


 今日は退社後のルージュまで用意した。こんな気持ちになったのは何年ぶりかしら。


 いつものように書籍売り場で待ち合わせをした。二人は階上のカフェに入った。


「お勧めのCD買いましたよ。気に入りました。歌はロック調と言うのか、魂を込めた歌い方ですね」


「そうばかりではないですよ。フォーエバー・ラブはバラード調で私の一番大好きな歌です」


「僕にはどれがどの曲だったかわかりません」


 麗子は顔を寄せると小さな声で口ずさんだ。田村は歌声よりも麗子の艶めかしい女の匂いにどきりとした。


 田村はふと思いついた。


「香山さん、その歌好きです。良いですね。この曲はカラオケにありますか?」


「ありますよ。私、よく歌います」


「これからカラオケに行きましょう。是非聞かせて下さい。綺麗な声ですね」


「そんな……急に言われても……」


「聞かせて下さい!行きましょう。YOSHIKIを紹介した香山さんの責任ですよ」


                       つづく

次回は8月24日金曜日朝10時に掲載します