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   あなたは恋を知らない 10

 「珈琲にしましょうか?」


「ううん、カクテルがいいわ。ピーチカクテル」


 麗子は三杯目である。田村はスコッチの水割りにした。暫くして、ふと会話が途切れた。


「ね、何か話して」


 酒のせいか、口調はフランクになっていた。麗子は身体がふわーと浮いているような気がした。


「大丈夫ですか?」


 田村は心配そうに聞く。麗子は普段、コップ一杯のビールがやっと飲める程度だった。


「わたし、帰ります!」


 時刻はもう直ぐ23時。ここも閉店の時間である。


 田村は少しふらつき気味の麗子と改札を入った。


「あれ?田村さんどちらまで?」


「送りますよ。何駅ですか?」


「あたし駒込よ。田村さんは?」


「駒込」


「嘘おっしゃい!池袋と言ってたじゃない。オオカミだ!」


 少し酔ったふりが入っていた。


「違います。心配だから……」


「大丈夫です。今日はご馳走様でした。おやすみなさい!」


 田村にオオカミの気持ちはなかったが淡い気持ちでいた。

それを見透かれたような気がして立ち止まった。


 麗子は手すりを掴みながら階段を上がって行く。あれ?ついて来ないのかしら?案外冷たいのね。後ろは振り返らなかった。


 田村はアパートに帰り着くと、机の前に座りぼーっとしていた。香山さん大丈夫だろうか?


 後悔していた。送って行けば良かった。自分が情けなかった。秋の夕焼け空のように淡くせつなく寂しかった。


 麗子は駅を出ると酔いは覚めていた。あの人気持ちはないのね。でも私、何だか変。


 今更、恋なんてするはずがないわ。あの人、やっぱり恋を知らない。寂しい人。


 あれから30分以上経つ。田村は居ても立ってもいられなかった。心配で香山に電話した。


 麗子はスマホに田村の着信を見た。5回目の着信音で出た。


「はい」


「田村です。大丈夫ですか?今どこですか?」


 早口に一気に言う。


「家に着きました。大丈夫ですよ」


 麗子は嬉しくなった。どうして?私変かしら?


「良かった!後悔してました。断られても送るべきだった。ごめんなさい」


「わたし、断っていませんよ」


「えっ……」


「大丈夫ですと言っただけですよ」


 笑い声で言う。二人は再び週末に会うことになった。


                      つづく

次回は8月17日金曜日朝10時に掲載します