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      あなたは恋を知らない 1

 周りはうるさくて困る。人が結婚しようとしまいと関係ないだろう。


 そう思ったのは40歳迄だった。今は誰も何とも言わない。


 男は来年50の大台に乗る。古希を過ぎた両親が時々寂し気に聞く。もうあきらめているようだ。


 なぜ結婚しなければならないのだ。生活に何の不自由もない。


 人が生きるとは、好きに自由に生きることが最善だと思っている。


 夢?そんなものはない。第一、夢は必要なのか?夢は生きるための希望だと聞く。


 今の生き方に何の不満も無い。夢など必要は無い。勤めも30年近くなるが何の不満も無い。


 同期入社では最初に課長職を得た。全て順調だ。逆に順調過ぎてこれで良いのだろうかと少し不安になる時がある。


「すみません!鞄をどけて貰って良いですか?」


「あっ、ごめんなさい!」


 男は本の上の鞄を手に持った。男は立ち読みの本に夢中になっていた。


 女は鞄の下にあった音楽雑誌を手に取った。


「すみませんでした」


「いや、こちらこそごめんなさい」


 男はその立ち読みの本を持ってレジに向かった。女の後ろに並んだ。


 彼女は何気なく振り返った。男に気が付くと、


「すみませんでした。読書中お邪魔しました」


 にっこり笑いながら言う。立ち読みを読書中と言われ照れ笑いしながら、


「はい、お邪魔でした」


 男は珍しく冗談で返した。


「ごめんなさい、毎月買う本で場所が決まっていたのです」


「いえ、冗談です。夢中になっていただけです」


「夢中でいらっしゃいましたね。何の本ですか?」


「次の方どうぞ!」


 レジから声が掛かる。


「どうぞお先に!」


 彼女が促す。


「いえ、順番ですからどうぞ!」


 彼女は軽く会釈しながら3番目のレジに並んだ。男の番は直ぐ来た。5番目のレジに行った。


 レジは二人ほぼ同時に終わった。偶然並ぶようにして店を出ようとした。


「先程の本はどんな本ですか?」


 彼女がにっこり笑いながら聞いて来た。


「あっ、見せますよ!」


 男は鞄を下に置き、袋から本を出そうとして下に落とした。


                        つづく

次回は6月15日金曜日朝10時に掲載します